【映画コラム】夏にちなんだ異色ホラーを紹介『オブセッション 災愛』『ユースフル・ゴースト』『だぁれかさんとアソぼ?』

2026年7月24日 / 08:00

(C)2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.

 一方、タイから届いた『ユースフル・ゴースト』(10日公開)は、さらに大胆な発想で観客を驚かせる。粉じん公害が深刻化したバンコクで、呼吸器疾患によって妻ナット(ダビカ・ホーン)を失ったマーチ(ウィットサルート・ヒンマラート)の前に、彼女の霊が掃除機の姿となって帰ってくるという奇想天外な設定だ。

 『殺人ブルドーザー』(74)『ザ・カー』(77)『クリスティーン』(83)など、車に霊が宿るホラー映画はこれまでも存在した。しかし、憑依(ひょうい)する対象が掃除機という発想には思わず笑ってしまう。

 夫婦が愛を確かめ合う場面が、第三者には「人間が掃除機を抱きしめている」ようにしか見えないというシュールな演出も絶妙だ。

 もっとも、本作は単なるアイデアの奇抜さだけでは終わらない。タイの怪談「メー・ナーク・プラカノーン」を下敷きに、ロマンス、コメディー、ホラー、SFを自在に横断しながら、性的マイノリティーへの偏見、多様な愛の形、記憶と忘却、個人と社会の関係といった現代的なテーマを織り込んでいる。

 長編デビュー作となるラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督ならではの粗削りな演出も魅力で、2025年のカンヌ国際映画祭・批評家週間グランプリ受賞も納得の個性派作品だ。


page top