【週末映画コラム】実話を基にイタリアを舞台にした映画 海の男たちの誇りと絆を描いた『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』/自動車メーカー創業者の内面に迫った『フェラーリ』

2024年7月5日 / 08:00

『フェラーリ』(7月5日公開)

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 1957年。イタリアの自動車メーカー、フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は、難病を抱えた息子ディーノを前年に亡くし、会社の共同経営者でもある妻のラウラ(ペネロペ・クルス)との関係も冷え切っていた。

 そんな中、エンツォは愛人のリナ(シャイリーン・ウッドリー)とその息子のピエロの存在を妻に知られてしまう。さらに会社は業績不振に陥って破産寸前となり、競合他社からの買収の危機にひんしていた。エンツォは、起死回生の一手として、イタリア全土1000マイルを縦断する過酷なロードレース「ミッレミリア」に挑む。

 マイケル・マン監督が、ブロック・イェーツの『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像』を原作に、私生活と会社経営で窮地に陥った59歳のエンツォが挑んだレースの真相を描く。製作も兼ねたドライバーが、癖の強いエンツォを見事に演じている。まさにカメレオン俳優の面目躍如といった感じだ。

 ところで、マン監督が製作に回った『フォードvsフェラーリ』(19)にもエンツォは登場したが、あの映画はフォード側(アメリカ)から見たものだったから、今回は逆側から描いたことになる。つまりこの2作はコインの裏表のような映画なのだ。

 ただ、この映画はレースシーンの音や映像はすごいのだが、会社の経営や妻と愛人の間で悩むエンツォの姿を映す比重が大きいので、エンツォやレーサーたちのレースやレーシングカーに注ぐ狂気のような情熱が、『フォードvsフェラーリ』のようにストレートに伝わってこないところがあった。

(田中雄二)

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