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『春画先生』(10月13日公開)
「春画」の研究者で、「春画先生」と呼ばれる芳賀一郎(内野聖陽)は、妻に先立たれて以来、世捨て人のように研究に没頭する日々を過ごしていた。そんな芳賀から春画鑑賞を学ぶことになった24歳の春野弓子(北香那)は、春画の奥深い魅力にのめり込んでいくと同時に、芳賀に恋心を抱くようになる。
やがて、芳賀が執筆している「春画大全」の完成を急ぐ編集者の辻村(柄本佑)や、芳賀の亡き妻の姉である一葉(安達祐実)の登場によって、波乱が巻き起こる。
江戸文化の裏の華である春画に魅せられた型破りな師弟コンビが織りなす春画愛を描いたコメディー。原作・脚本・監督は塩田明彦。映倫審査ではR15+に指定され、商業映画としては日本映画史上初めて無修正の浮世絵春画が上映される作品となった。
春画を教える人と学ぶ人という正統派の芸術映画を想像すると肩透かしを食らう。芳賀はむっつりスケベで、弓子は見かけによらず直情型で性に対する奔放さを持っている。その2人の欲望に対するズレが生み出すおかしさがこの映画の真骨頂。そこに、春画を仲立ちとした先生(男)と生徒(女)の偏愛や、変態性と純愛が交錯する性的倒錯が描かれる。
もっとも、ストーリーの流れには脱線が多く、登場人物の行動にも支離滅裂なところがある。また性描写にも笑うに笑えないものがあり、本来目指したであろう、“笑い絵”と呼ばれる春画を媒介とした艶笑コメディーに成り切れていないのが残念だった。
(田中雄二)