不穏な空気が漂うミステリー『ドント・ウォーリー・ダーリン』 亡くなった人への思いをファンタジーに仮託して描いた『すずめの戸締まり』【映画コラム】

2022年11月11日 / 07:00

『すずめの戸締まり』(11月11日公開)

(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

 九州に暮らす17歳の岩戸鈴芽=すずめ(声:原菜乃華)は、扉を探しているという旅の青年・宗像草太(声:松村北斗)に出会う。彼の後を追って山中の廃墟にたどり着いた鈴芽は、古びた扉を見つけ、引き寄せられるようにその扉に手を伸ばすと、不思議な現象が起きる。

 やがて、日本各地で次々と扉が開き始める。扉の向こう側からは災いがやって来るため、鈴芽は扉を閉める「戸締まりの旅」に出ることに。数々の驚きや困難に見舞われながらも、前へと進み続ける鈴芽だったが…。

 日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる「扉」を閉める旅に出た少女の冒険と成長を描いた長編アニメーション。

 『君の名は。』(16)のすい星衝突、『天気の子』(19)の異常気象、そしてこの映画と、新海誠監督の映画は、緻密な風景描写を背景に、天変地異とボーイ・ミーツ・ガールを融合させるパターンの繰り返しだが、今回は、鈴芽が旅する、九州から愛媛、神戸、東京、東北へのロードムービーとしての要素を加えている。

 東日本大震災から10年余を経て、震災が与えた結果を直視し、亡くなった人への思いをファンタジーに仮託して描くという点では、先に公開された『天間荘の三姉妹』と通じるところがあると感じた。

(田中雄二)

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