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一方、災厄は宇宙からもやって来る、というSFの形を借りて描かれたのが、ジャック・フィニイ原作、ドン・シーゲル監督の『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)だ。
宇宙から飛来した巨大な豆のサヤから人間のクローンが次々と生まれ、寝ている間に本物と入れ替わっていく。家族や隣人が外見はそのままで別人になるというテーマは、製作当時の社会背景(米ソ冷戦、赤狩りによるマスヒステリー)を反映したものだった。
そして、『SF/ボディ・スナッチャー』(78)『ボディ・スナッチャーズ』(93)を経て、4度目の映画化となった『インベージョン』(07)では、主人公は女医(ニコール・キッドマン)、宇宙から来た未知のウイルス、政府の情報隠滅といった、現代風なアレンジがなされていた。
この原作が、こうして何度も映画化されるのは、その根底に災厄が招く人間不信の恐怖が内包されているからだろう。これは、今の新型コロナウイルス感染者への差別と重ね合わせて見ることもできるのではないだろうか。
また、SF映画では、人工衛星に付着した未知の細菌が地球を襲うさまを描いた、マイケル・クライトン原作、ロバート・ワイズ監督の『アンドロメダ…』(71)もある。
これらの映画を見れば、ウイルス拡大の恐怖は今に始まったことではないことがよく分かるし、過去から学ぶことも多々あると思う。(田中雄二)