【映画コラム】老優の存在感と脚本のうまさで楽しませる『ヴィンセントが教えてくれたこと』と『Dearダニー 君へのうた』

2015年9月5日 / 17:37

 

(C) 2015 Danny Collins Productions LLC

(C) 2015 Danny Collins Productions LLC

 『Dearダニー 君へのうた』は、自らの音楽活動に限界を感じている老ロックスター、ダニー・コリンズ(パチーノ)のもとに、43年前にジョン・レノンが彼に向けて書いた手紙が届く。ダニーは愛と人生を取り戻すべく、一度も会ったことがない息子のもとを訪れるが…という、スターの気まぐれから始まる人情劇。

 ジョンが面識のない新人ミュージシャンを励まそうとして書いた手紙が、巡り巡って数十年後にようやく本人に届いたという事実を基に、一本の映画として創作した監督、脚本のダン・フォーゲルマンの腕前はなかなかのもの。中でも、まるで落語の落ちを思わせるようなラストシーンが見事だ。

 ダニー役は、1970年代からギラギラとした個性を武器に活躍し、今や75歳となったパチーノの年輪やキャリアが生きる役柄。実際、ダニーの若き日の写真には映画スター、パチーノ自身のものが使われている。

 またパチーノが、息子役のボビー・カナベイルはもとより、マネジャー役のクリストファー・プラマー、アネット・ベニングといった大ベテランたちと繰り広げる丁々発止の掛け合い演技も楽しい。

 フォーゲルマンは「セカンドチャンスを手に入れようと頑張る人たちを描きたかった。最近この手の映画が少なくなってきているからね。映画を愛する洗練された観客のためにこの脚本を書いた。笑わせて泣かせる大人のための映画だ」と語っている。バックに流れるジョンの名曲も聴きものだ。(田中雄二)

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