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今回は過去の映画やドラマ、ゲームへのオマージュやパロディーを満載した愉快な2作を紹介しよう。
まずは、『キック・アス』シリーズのマシュー・ヴォーン監督がサイバーコミックを映画化したスパイアクション『キングスマン』から。
ロンドンの高級テーラー「キングスマン」の裏の顔は世界最強のスパイ組織。ここに所属する腕利きスパイのハリー(コリン・ファース)が、元同僚の遺児エグジー(タロン・エガートン)を一人前のスパイに仕立て上げていく。
1960年代、東西冷戦を背景に、スパイを主人公にした『007~』『ハリー・パーマー~』『電撃フリント~』『サイレンサー~』などのシリーズ映画、「ナポレオン・ソロ」「それ行けスマート」などのテレビドラマが次々に作られた。
本作は、黒眼鏡にスーツ姿の諜報員が、傘、靴、アタッシュケースといった小道具に仕込んだ秘密兵器を使ってアクションを展開させるなど、60年代のスパイ物を強く意識して作られている。そうしたレトロな感覚を生かしながら、現代流の殺陣や映像処理を施し、新たなスパイ映画として仕上げたところがユニークな点。
また、ハリーがエグジーに自分たちの関係を、『マイ・フェア・レディ』(64)『大逆転』(83)『ニキータ』(90)などの映画を例にとって説明するシーンがあるが、身分の逆転や成り上がりを描いたこれらの映画を挙げることは、今もイギリスに根強く残る階級制度をやゆするという意味がある。かつて労働者階級出身のスパイ、ハリー・パーマーを演じたマイケル・ケインが、本作では組織の指揮者役で登場するのも象徴的だ。
本作のある種グロテスクな殺りくシーンに眉をひそめる向きもあろうが、もともとこれはコミックを原作としたお遊び映画なのだと思えば腹も立たないだろう。
ところでスパイ映画と言えば、「ナポレオン・ソロ」を映画化した『コードネーム U.N.C.L.E.』や007シリーズの最新作『スペクター』も公開待機中。こちらも楽しみだ。