【芸能コラム】「4号警備」人間ドラマにユーモアとアクションを凝縮した濃密な30分

2017年5月6日 / 14:18
元警察官の朝比奈準人を演じる窪田正孝

元警察官の朝比奈準人を演じる窪田正孝

 “ボディーガード”と聞いて、どんな姿を想像するだろうか。黒いスーツに身を包み、政府要人や著名人を危険から守る屈強な男たち…? だが、「4号警備」に登場するボディーガードは、ビルの守衛のような“施設警備業務(=1号警備)”や、工事現場で歩行者を誘導する“雑踏警備業務(=2号警備)”なども行うごく普通の民間警備会社の警備員。タイトルの「4号警備」とは、それら警備員の業務のうち、身辺警護=ボディーガードを意味する言葉だ。

 一見、刑事ドラマに近い印象を受けるかもしれないが、警備員=民間人故、拳銃や手錠を携帯しないなど、“警察もの”とは一味異なる作品に仕上がっている。

 主人公は、ひょうひょうとした中に熱い心を秘めた平成生まれの行動派・朝比奈準人(窪田正孝)と、慎重で臆病な中年男・石丸賢吾(北村一輝)。「シシ丸」とからかう朝比奈に、おっとりした口調で「私の名前はシシ丸じゃない」と返す石丸との軽妙な掛け合いや、息の合ったコンビぶりは“バディ(相棒)もの”のお約束だ。

 いずれも、つらい過去を背負って警備員という職業に就いている点が特徴。警察官だった朝比奈は、ストーカー事件で恋人を亡くしたことから退職して警備員に。かつてはやり手の経営コンサルタントとして活躍した石丸も、会社を潰した今は妻や娘と別れ、1人で暮らしている。刑事ドラマとは一味違う厚みのある主人公のドラマが、縦糸となってシリーズを貫く。

 毎回登場する依頼人たちのドラマも、切り口が見事だ。インターネット上にデマを拡散されるストーカー被害者の女性、ブラック企業の社長を父に持つが故にいじめに遭う少年…。本来、被害者である人たちが、ふとしたきっかけからネット上や不特定の大衆からの悪意にさらされる姿を描くなど、社会を見詰める視点の鋭さに思わず考えさせられる。

 さらに、濃密なドラマに彩りを添えるのが、見応えのあるアクション。混雑した通路で刺客と対決した第1回、依頼人宅に侵入したストーカー撃退のため、マンションの外壁を上る第2回など、エンターテインメントらしい見せ場となっている。

 深みのある人間ドラマを程よいユーモアで包み、本格的なアクションも盛り込んでの30分。1時間ドラマ並みのボリュームを凝縮した濃密でテンポの良い展開が心地よく、「99.9-刑事専門弁護士-」(16/TBS系)でも一ひねりしたドラマを作り上げた脚本家・宇田学ら制作スタッフの力量にはうならされる。

 この他、脇を固めるキャストも片岡鶴太郎、濱田マリ、木村多江など個性派ぞろい。「とと姉ちゃん」(16)の阿部純子、「真田丸」(16)でブレークした高木渉、「べっぴんさん」(16~17)の久保田紗友といった注目の俳優たちも出演しており、彼らの活躍も見どころだと言えるだろう。

 「4号警備」は毎週土曜日午後8時15分からNHK総合で放送中。1話完結なのでどこから見ても楽しめるが、NHKオンデマンドなどの配信を利用すれば、第1回からの視聴も可能だ。放送済みの第4回までを全て振り返っても、わずか2時間。未見の方は映画を1本見るつもりで、これから追い掛けてみてはいかがだろうか。(井上健一)


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