「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第二回「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』」魅力的な俳優陣が奏でる出色のアンサンブル【大河ドラマコラム】

2025年1月17日 / 10:34

(C)NHK

 やがて源内が「お前さん、改めて見ると、相当いい男だね」と蔦重に迫ると、一転して攻守交代。突然のことに「え?」と戸惑う蔦重に、「いいじゃない、いいじゃない…」と横から迫る源内。それをかわそうとして、座ったままそっぽを向いて逃げる蔦重。さらに源内が「なあ、お前さんが、花魁の格好をしとくれよ。そうしたら、俺、書けんじゃないかな?」と提案すると、蔦重は「じゃあ、やりましょうか…?」と、渋々引き受けようとする。

 この横浜と安田の喜劇的な掛け合いは、セリフのトーンや間、2人の息もぴったりで、テレビを見ながら思わずうなった。

 だがこの直後、男装をした花の井が部屋に現れ、ムードがガラッと変わる。源内が「女郎が男の格好をして、俺の気を引こうって魂胆かい?」と突っかかると花の井は、「男。果たして、男かどうか。今宵のわっちは“瀬川”でありんす」と答える。源内の求める相手が、亡き思い人の瀬川菊之丞であることに気付き、自分をそう呼んでほしいと機転を利かせた、というわけだ。花の井の粋な計らいを気に入った源内は、「諸国大名、弓矢で殺す、松葉の瀬川は目で殺す、ってなとこかな」と言葉をかける。このとき、小芝の目がクローズアップになったが、その色っぽさは、源内の言葉を裏付けるだけの説得力があった。

 こうして花の井と一夜を過ごした源内は、「序」の執筆という蔦重との約束を果たす。蔦重と源内の喜劇的な駆け引きを経て、源内と花の井のしっとりとした一夜へ…。このスムーズな場面転換も鮮やかだった。

 脚本家の森下佳子が執筆した脚本が磨き抜かれていることは言うまでもないが、それをしっかりと伝える俳優陣の力量にはうなるばかりだ。そして彼らがアンサンブルを奏でることで、その魅力が何倍にも増していく。もちろん、魅力的な俳優はこの3人だけではなく、他にも数多くいる。この先、彼らがどんな芝居を見せてくれるのか。楽しみで仕方ない。

(井上健一)

(C)NHK

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