「どうする家康」第39回「太閤、くたばる」合議制か、天下取りか? 揺れる家康の心情を表現した巧みな構成【大河ドラマコラム】

2023年10月18日 / 17:52

「天下はどうせ、お前に取られるんだろう」

「なんもかんも放り投げて、わしはくたばる。あとは、お前がどうにかせい」

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「どうする家康」。10月15日放送の第39回「太閤、くたばる」では、太閤・豊臣秀吉(ムロツヨシ)がついに最期を迎えた。自らの死期を悟った秀吉は、主人公・徳川家康(松本潤)を枕元に呼び、後を託す。冒頭に引用したのは、その際、秀吉が家康に語った言葉の一部だ。秀吉が、家康を自分の後の天下人だと考えていたことがよくわかる。

「どうする家康」(C)NHK

 これに対して家康は、「そんなことはせん。わしは、治部殿(石田三成/中村七之助)らの政を支える」と答えている。これは、家康に先立って秀吉に呼ばれた三成が、秀吉亡き後の政治体制について「豊臣家への忠義と、知恵ある者たちが話し合いを持って、政を進めるのが、最も良きことかと」と“有力大名たちの合議制による政治”を提案し、認められたことを受けたものだ。

 その報告を三成から受けた家康は、「力のある大名たちをまとめ上げ、われら5人の奉行をお支え頂くこと、お願い申し上げる次第」と依頼され、「無論。引き受けます」と答えている。

 だがそれは、家康の本心だったのだろうか。これに先立つあるやり取りを思い返してみると、印象が少し変わってくる。

 この回の前半、家康に長く仕えてきた忠臣・酒井忠次(大森南朋)も最期を迎えた。その直前、最後の対面を果たした家康は、忠次から「天下をお取りなされ。秀吉を見限って、殿がおやりなされ」との願いを託されていた。この時の家康は「天下人など、嫌われるばかりじゃ」と、その願いを拒んだようにも見えた。

 ところがこの回のラスト、家康の回想という形で、その後にさらなるやり取りがあったことが明かされる。「信長にも、秀吉にもできなかったことが、このわしにできようか」と尋ねる家康に対して、忠次は「殿だから、できるのでござる。戦が嫌いな殿だからこそ。嫌われなされ。天下を取りなされ」と返したのだ。この言葉を受けた家康が、じっと忠次の顔を見つめたまま無言で涙を流す印象的なシーンで、この回は幕を閉じた。

 
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