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そして、アカデミー賞の変化という点で振り返っておきたい出来事が、もう一つある。前回この二つの賞が割れた15年は、ゴールデン・グローブ賞監督賞を『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター、全米監督組合賞を『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアレハンドロ・G・イニャリトゥがそれぞれ受賞している。その結果、アカデミー賞監督賞は、今回と同じく全米監督組合賞を制したイニャリトゥが受賞した。
当時はちょうど、イニャリトゥを含むメキシコ出身者が3年連続でアカデミー賞監督賞を受賞し、メキシコの映画人に注目が集まった時期だった。ここからも、この二つの賞が割れるのは、アカデミー賞の変化の兆しと捉えてみたい気がする。
これらを踏まえると、ハリウッドの映画賞から世界の映画賞へと変わりつつあるアカデミー賞は、また新たな変革の時期に差し掛かっているのかもしれない。『エブエブ』の監督賞受賞は、そんなことを考えさせられる出来事だった。来年のアカデミー賞がどうなるのか、今から楽しみだ。
(井上健一)