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NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」。2月26日に放送された第8回「三河一揆でどうする!」では、前回勃発した一向一揆のその後が描かれた。その中で浮かび上がってきたのが、「国のあるじは誰なのか?」という問題だった。
前回、主人公・松平家康(後の徳川家康/松本潤)は、止める家臣たちの忠告を聞かず、一向宗の寺からそれまで免除されていた年貢を取り立て、これが一揆の引き金となった。
そして迎えた今回、やむなく一揆を武力で鎮圧しようとするが、松平家臣の中からも一向宗側につく者が続出。
さらに、死を恐れぬ一向宗徒たちの抵抗や寺との戦いを恐れる松平側の士気の低さもあり、鎮圧は難航する。その上、夏目広次(甲本雅裕)の離反や、混乱に乗じた国衆の謀反を招き、火に油を注ぐ有様。
そんな八方塞がりの状況の中、家康の口から飛び出したのが、「この国のあるじはわしじゃ」の一言だった。
これは、事態を憂慮する妻・瀬名(有村架純)の「殿が、空誓上人(一向宗を率いる本證寺の住職/市川右團次)に謝ってしまえば、全て済む話ではありませんか」という言葉に始まる会話の中で出たもの。
もちろん家康としてはそれを受け入れることはできず、前述の言葉が飛び出す。これが図らずも領主の立場に対する家康の認識を浮き彫りにした。
だが、本当に「この国のあるじはわし」なのか。その答えを示したのが、家康と今川義元(野村萬斎)とのやり取りだ。
一揆鎮圧のため、自ら一向宗の拠点、本證寺に乗り込み、銃撃を受けて倒れた家康の脳裏に、今川領で暮らした頃の義元とのやり取りがよみがえる。そこで義元は、家康にこう尋ねる。「この国のあるじは誰ぞ?」
これに「もちろん、太守様にございます!」「京の将軍様、いいえ、天子様にごさいます!」と繰り返す家康の答えは、「この国のあるじはわしじゃ」と同じく、「この国のあるじは権力者」という認識に基づくもの。つまり、「権力者があるじなのだから、言うことを聞け」ということになる。
だが義元の答えは、そんな家康の認識とは正反対のものだった。義元は「この天下のあるじはな…」と前置きすると、家康の周囲にいる一揆組の人々を指して、「あの男じゃ、そしてあの女じゃ。あるいは、あの僧でもあり、あの百姓でもあり、あるいは、あの年寄りでもあり、あの子どもたちでもある」と答えた後、さらにこう続ける。
「よいか、あの者たちが汗水垂らして得た米と銭で、われらは生きておるのじゃ。われらは民に、生かしてもらっておるのじゃ。よく覚えておけ。民に見放されたときこそ、われらは死ぬのじゃ」