【連続テレビ小説コラム】「カムカムエヴリバディ」第19週 さまざまな人々の交わりを描く物語が、夢破れた2人の若者に示す未来とは

2022年3月13日 / 07:00

 それは、夢破れた男たちも例外ではない。甲子園の夢を絶たれた勇は、稔亡き後、家業を継ぐと、女中だった雪衣(岡田結実)と結婚し、雉真家の当主となった。

 錠一郎も、支えてくれたるいと家庭を持ち、ひなたと桃太郎という2人の子に恵まれた。五十嵐や桃太郎も、決してここで人生が終わったわけではない。まだ若い彼らにも、まだ見ぬ未来が待っているはずだ。

 だがそれは、物語を俯瞰して見ている視聴者だから言えること。当事者である五十嵐にとっては、挫折を経験した直後で、先のことなど想像もできないに違いない。それでも、いずれはその先の人生を選択する時がやってくる。

 第90回、撮影所を去る五十嵐に錠一郎は、「これから、いろんなことがあると思うけど、それが、五十嵐くんの選んだ道やったら、きっとそれが…、それは、五十嵐くんのひなたの道になるから」と語った。五十嵐の心には、この言葉がどんなふうに届いたのか。

 また、第92回のラストで錠一郎が手にしたトランペットは、失恋の腹いせに万引きをしてしまった桃太郎の胸に、どんな音を響かせるのか。

 五十嵐と桃太郎、夢破れた2人の若者の今後が気になるのと同時に、次週予告にはこれまで消息がはっきりしなかった懐かしい人たちが続々と登場している。大きな山場を迎えそうな予感が漂う第20週。期待して待ちたい。

(井上健一)

 

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