【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第三十七回「栄一、あがく」急展開を見せる終盤の行方を占う見事なドラマと俳優陣の好演

2021年12月1日 / 14:27

 台本を基に書かれた小説版「青天を衝け」第4巻を読むと、この場面の篤二と兼子のやり取りは本来、もう少し長かった様子がうかがえる。だが、篤二を案じつつも疎外感を覚える兼子の心情がにじむ大島の表情には、この短いやりとりで2人の関係を伝えるだけの説得力があった。

 短い登場場面でどんどん変わっていく兼子を演じる難しさについては、大島自身がインタビューで「この場面ではどのぐらい年齢を重ねていて、どれぐらいの距離感で栄一さんと歩いているか、どんなふうに顔を見合わせるか。そういう細かいことを全部、監督と相談しながらリハーサルで決めていきました」「『これでいいのかな?』『大丈夫かな?』『合っているかな?』とワンシーンごとに頭を抱えながらやっていました」と語っている。この回を見る限り、その努力はきちんと実を結んでいるように思える。

 この他、体調の衰えを言葉ではなく表情や動きで表現した五代役のディーンの好演も、栄一に向けて語る言葉の説得力を高めており、印象に残った。

 「残り少ない回数でいかに栄一の後半生を描くのか」。この回の的確な構成や俳優陣の好演を見る限り、その心配は杞憂(きゆう)に終わりそうだ。むしろ、どんなふうにこの先の半生を描いてくれるのか、楽しみになってきたと言ってもいい。最終回まで無事に駆け抜けてくれることを期待して、残りの物語を見守っていきたい。(井上健一)

五代友厚役のディーン・フジオカ

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