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史実を振り返ってみれば、実際は、栄一はここまで論語にまったく触れてこなかったわけではない。だが、三野村、大久保、西郷隆盛(博多華丸)という先達が今回で世を去ったことを考えると、これから栄一は世の中を先頭に立って歩んでいくことになるはずだ。
今回がその節目と考えると、栄一自身が「論語には、己を治め、人に交わる常日頃の教えが説いてある。俺は、この論語を胸に商いの世を戦いてえ」と語ったように、改めて論語で人としての在り方を見つめなおす展開は、ドラマとして秀逸な脚色といえるのではないだろうか。
前半で対立した三野村に栄一が終盤、「三井銀行開業、おめでとうございます」とあいさつしたことも含め、本作の脚本の見事さを改めて実感した回でもあった。劇中で三野村が「あまりにも金中心の世の中になってきた」と語っていたが、そんな世の中にまた一つ成長した栄一がどう立ち向かっていくのか、これからの展開が楽しみだ。(井上健一)