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「泥くさく生き抜く強さや生命力が、渋沢さん(=栄一)の大きな魅力」。これは、放送開始当初のインタビューで、主演の吉沢が語っていた言葉だが、それは喜作にも当てはまる。その意味では、栄一とは異なる道をたどった喜作の生きざまからも、「生き抜く」という物語に込められたメッセージを読み取ることができる。
実際は、実業界に転身した後の喜作はたびたび事業に失敗し、栄一の援助を受けていたらしい。とはいえ、そんなふうに失敗を繰り返しながらも、晩年まで人生を全うしたところに、むしろ栄一に勝るとも劣らない人間味と親しみを覚える。大森美香の見事な脚本と演者・高良健吾の人間味あふれる芝居が、そこに大きく貢献していることは言うまでもない。
日々生きることの大変さを思い知る昨今、喜作のように生き抜くことで、私たちも今まで想像もしなかった場所へたどり着くことができるのではないか…。そんなことを考えさせられる第三十二回だった。(井上健一)