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それに比べると、市郎右衛門は大人だ。「俺は、政(まつりごと)がどんなに悪かろうが、百姓の分は守り通す。それが、俺の道だ。栄一、おまえはおまえの道を行け」と、自分の思いとは異なる栄一の生き方を認め、快く送り出す。
この場面、普通だったらけんかになってもおかしくないが、意見が対立する相手を認め合う姿勢は、このドラマを通して一貫しており、ここでもそれが生きた印象だ。これを踏まえると、外国人の追放を目的とした攘夷に突っ走る栄一の未熟さがより際立ってくる。
とはいえ、激動の幕末に船出した栄一の航海はまだ始まったばかり。これから誰と出会い、どんな経験を経て“日本資本主義の父”へと成長していくのか。その過程を、期待を込めて見守っていきたい。(井上健一)