【芸能コラム】コロナ禍で開催される異例づくめの第93回アカデミー賞。主要6部門の行方は!?

2021年4月23日 / 06:28

 コロナ禍の影響で映画の公開延期や映画館の休館が相次ぎ、映画界も大きく様変わりした2020年。ハリウッドの祭典、第93回アカデミー賞も従来から2カ月ほどずれ込み、4月26日(日本時間)に開催されることとなった。また、今回に限り「劇場公開作品のみ」という前提条件を変更し、対象を配信作品にも広げた結果、NetflixやAmazon Primeなどの作品が多数ノミネートされることになった。異例づくめではあるものの、ひとまず無事に開催されることを喜びつつ、主要6部門の行方を予想してみたい。

『ノマドランド』(C)2020 20th Century Studios. All rights reserved.

 まず今年の状況だが、ノミネート数で見ると、作品賞、主演男優賞、監督賞など10部門で候補となった『Mank/マンク』(Netflix配信中)が最多。これを、6部門候補の『Judas and the Black Messiah(原題)』、『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(Amazon Prime配信中)、『シカゴ7裁判』(Netflix配信中)、『ノマドランド』(公開中)、『ファーザー』(5月14日公開予定)、『ミナリ』(公開中)、5部門候補の『プロミシング・ヤング・ウーマン』(7月16日公開予定)、『マ・レイニーのブラックボトム』(Netflix配信中)などが追う。

 中でも話題の中心は、自動車で放浪生活を送る米国の高齢者の現実を描き、ベネチア国際映画祭金獅子賞に輝いたほか、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞など、米アカデミー賞の“前哨戦”と呼ばれる賞を総なめにした『ノマドランド』だ。

 それでは、各部門の予想に移りたい。

【助演男優賞&助演女優賞】

 助演男優賞は、ゴールデングローブ賞や全米俳優組合賞などを軒並み制した『Judas and the Black Messiah(原題)』のダニエル・カルーヤがほぼ当確か。1960~70年代、米国で黒人差別に立ち向かった政治組織ブラックパンサー党の指導者を熱演している。

 助演女優賞は、毒舌風刺コメディー『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(Amazon Prime配信中)の新人マリア・バカローバと、80年代を舞台に韓国系アメリカ人一家の暮らしをつづったドラマ『ミナリ』のユン・ヨジョンが、他の候補よりも頭一つ抜けた印象。とはいえ、前哨戦の結果から判断すると、娘夫婦と暮らすたくましいおばあちゃんを好演した韓国の名優ヨジュンが有利か。

【監督賞】

 監督賞は、名作『市民ケーン』(41)の脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツの実像に迫った『Mank/マンク』のデビッド・フィンチャー、半自伝的作品『ミナリ』で注目のリー・アイザック・チョン、男性社会を痛烈に風刺した復讐(ふくしゅう)劇『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネルらの争い。だがここは、やはり『ノマドランド』のクロエ・ジャオが本命だろう。

 ジャオ監督はアメリカ在住の中国人であり、もし受賞すれば昨年のポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』)に続き、2年連続でアジア系の監督が栄冠を手にすることになる。

 また、複数の女性監督(ジャオ、フェネル)がノミネートされたのも史上初の出来事で、09年のキャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』)以来2人目となる女性監督の受賞にも期待がかかる。

【主演男優賞】

 最有力は、『マ・レイニーのブラックボトム』のチャドウィック・ボーズマン。壮絶な過去を秘めた野心的なミュージシャンを熱演している。昨年8月、がんによる42歳での突然の死は世界に衝撃を与えたが、主演作『ブラックパンサー』(18)などで映画界への貢献度は高く、前哨戦でもリードしている。

 対抗馬は、『ファーザー』の名優アンソニー・ホプキンス。ユーモアを交えつつ、すさまじい迫力で認知症の高齢者を演じており、久々に名優の底力を見る思いがした。

 80歳を超えてなお、衰えぬ実力を見せつけたホプキンスには圧倒されたが、受賞はやはり前哨戦を多数制したボーズマンか。故人のオスカー受賞となれば、『ダークナイト』(08)のヒース・レジャー以来、史上3人目となる。

【主演女優賞】

 混戦模様の主演女優賞は、最大の注目ポイント。恐らく、最も予想が割れる部門ではないだろうか。候補者5人中、『マ・レイニーのブラックボトム』で実在の黒人歌手マ・レイニーを熱演したビオラ・デイビス、自動車で放浪生活を送る高齢女性に扮(ふん)した『ノマドランド』のフランシス・マクドーマンドが他者を一歩リード。

 これを、昼夜で表情を一変させ、男たちに鉄ついを下す女性を演じた『プロミシング・ヤング・ウーマン』のキャリー・マリガン、『The United States vs. Billie Holiday(原題)』で実在の歌手ビリー・ホリデイを演じてゴールデングローブ賞を受賞したアンドラ・デイ、ベネチア国際映画祭女優賞に輝いた『私というパズル』(Netflix配信中)のバネッサ・カービーが追う展開。

 とはいえ、いずれも権威ある映画賞で受賞するなど評価は高く、実力伯仲といった状況。その中であえて1人に絞るとすれば、アカデミー賞との一致率が高い全米俳優組合賞を受賞したデイビスとしておきたい。その迫力満点の演技は必見だ。

【作品賞】

 最注目の作品賞は、『Mank/マンク』、『ミナリ』、70年代米国の実話に基づく社会派ドラマ『シカゴ7裁判』など8作品がノミネートされた。いずれも力作ぞろいだが、ここは監督賞とそろえて、『ノマドランド』を本命としたい。

 
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