【芸能コラム】もはやコント…“駄じゃれ”と“お約束”でがんじがらめの異色刑事ドラマ「警視庁・捜査一課長2020」

2020年4月30日 / 12:27

 このように完全にパターン化することで、視聴者にとっては駄じゃれもお約束もスタンダードとなり、あって当たり前、ないと物足りなくなってしまうのだ。その証拠に、ファンの間では「今日も面白かったー!」「刑事ドラマなのにギャグ要素ありでワンパターンなのに飽きない」「これは刑事ドラマなのか?刑事コントなのか?(笑)」「捜査一課長は長いコントだと思っている…」と、笑いとともに徹底した姿勢を認める声が上がっている。

 “コント説”が出回る要因の一つに、出演者の芝居もある。実力派のベテラン役者がそろっているにもかかわらず、駄じゃれやお約束でガッチガチの脚本によって身動きが取れないのか、全員がアンナチュラル。

 取ってつけたように、昨今の日本のグローバル化やジェンダーレスについて語り合う場面では、言わされている感が否めない。お笑いコンビ・ナイツの塙にいたっては、「芸人は演技が上手」という定説を覆し、「流れるような棒読み」「表情筋が殉職している」と酷評されている。だが、それすらも今や見どころの一つとなっている。

 「エイプリルフールにうそをついたら殺された」「“3割引き”のシールが貼られたご遺体」「餃子の皮を握りしめるご遺体」という、あり得ない事件設定もコントレベル。あまりの振り切りぶりに「絶対このドラマふざけているでしょ?」「真面目なドラマだと思っていたがツッコミどころ満載で困惑」「フィクションならこれくらい振り切ってくれると力抜いて見られてありがたい…」と刑事ドラマとは思えない感想が噴出している。

 だが、制作サイドは極めて真面目。内藤は同シリーズを「ライフワーク」に位置付け、10年間は続けたいという意向を示している。また、視聴者に「犯人捜し」と「事件に関わる人の人間模様」を楽しんでもらい、「チームワークで何かを成し遂げることの素晴らしさ」を届けることを心掛けているそうで、そこに「笑い」の文字は一切ない。

 その一方で、内藤は「このドラマが皆さんの活力につながればうれしいですね」とも話している。コロナ禍にある今、「テレビで内藤さんを見ることだけが生きがいです」「これ面白いわね、昔のシリーズから見ておいたらよかったな」「本当みんな捜査一課長見てくれよ。最高に笑えるからさ」と、内藤の思いや意思とは違うのかもしれないが、「活力=笑い」として人々の心に届いている。

 再放送も含めてさまざまなドラマが放送されているが、そのどれとも一線を画す「警視庁・捜査一課長2020」。日がな家にこもる日々…。暇つぶしに見るもよし、刑事ドラマとして見るもよし、壮大なコントとして見るもよし。不思議な魅力にハマってみてはいかがだろうか。(錦玲那)

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