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フジテレビ開局55周年特別番組 松本清張ドラマスペシャル「死の発送」で、主人公の週刊誌記者・底井武八を演じる向井理、底井の同僚・津村亜紀を演じる比嘉愛未、2人の上司である週刊誌の編集長・山崎治郎を演じる寺尾聰が放送を前にインタビューに応じた。
本ドラマは、作家・松本清張氏が1961年に発表した同名小説の初映像化。岩手県水沢のとある林の中で、トランクに詰められ東京から岩手まで発送された男性の絞殺死体が見つかった事件の裏に隠された驚がくの真相を描く。 “競走馬”が物語のキーになっており、劇中で重要な意味を持つ競馬シーンは盛岡競馬場での大規模ロケで撮影が行われた。
向井 推理物なので説明せりふが多くて大変です。推理物は初めてで、これまで出演したほかのドラマと違うところが幾つかあり、視聴者の方に分かりやすく演じることがあらためて大事だと感じました。初めてのことはなんでも挑戦したいと思っていましたし、松本清張作品もいつか出演してみたいと思っていましたので、オファーを頂いて、「この時が来たのか」という思いでした。
向井 岩手県の盛岡や水沢でのロケは楽しかったですね。盛岡競馬場での撮影が長かったのですが、寒い時期で、馬が走っているところは見られませんでした。でも実際に馬に触れたり臨場感のあるシーンになったと思います。犯人をどんどん追い詰めていく最後のシーンは、楽しいという感情とは違いますが爽快でした。
向井 経験豊富な方で、本番以外の時間にはご自身の過去や現在のこと、お芝居のことなどいろいろなことをお話ししてくださいます。一番近くでお芝居させてもらっているので、終わってからふと思い出したりしますね。俳優業は人としての生き方が大事な仕事だと思うので、寺尾さんの視点から見たいろいろな世界や経験を教えていただいています。
寺尾 いつも聞かれるけど、演じてみての感想はないよね。本当は俳優に感想を聞くのはおかしい。僕たちは、見てくれる人がどういう感想を持ってくれるのかを期待してるのだから。作り手が「こういう感想を持ってる」とはなかなか難しくて言えない。ただ一つ言えることは、ここにいる向井と比嘉には非常に刺激を受けて楽しく撮影が進みました。
寺尾 2人はすごく面白い。でももっとずうずうしくなっていいと思う。あと5~10年たったら向井も比嘉ももっと面白い俳優と女優になっているんだろうなと期待感を抱けるし、勘も素晴らしい。最近出会う若い子たちは、みんな自信を持ってやっていて、どの作品でもいい若者に出会う。だから同年代の人と共演するよりこのぐらい若い人とやる方が刺激をもらえて面白いですね。
比嘉 こちらこそ、という感じです。向井さんとはCMでは共演しましたがお芝居では初めてですし、寺尾さんともなかなかご一緒できなかったので、毎日刺激を受けています。寺尾さんは、実はカメラが回っていないときの方がすごいお話をしてくださって、それが楽しいです。お芝居もそうですけど、経験されたことを先輩から伺う機会はなかなかありませんし、財産を分けていただいているような気持ちです。
寺尾 演じるというのは特殊な世界だからね。その日の気分で、台本に書かれているものを演じるときにそれまで培ったものが役に立つ。そうしたときに、あえて話し合わなくても演じる2人の関係性で成り立つ。それが大事なんだと思います。この仕事は保証がないからいつでも崖っぷちだけど、その中で自分のバランスを取っていかなくちゃならない。でも言いたいことを言って仕事がなくなったらいけないし、仕事を確保しつつ自分のスタイルをつくり、役者としての生き方を探していくのが大事。
寺尾 そんなにたくさんではないけれど、話しています。楽しければいいんだよ。あんまり考えなくていいと思う。僕も50年近く俳優をやってきて、真面目に誠実にやる必要はあるけど、それは楽しんでやることとイコールになる。生真面目にやる必要はない。脚本に書かれていることに寄せて演じる役のイメージをつくっていけば、例えば一行せりふを変えてみてもだんだんおかしくなくなっていくんだ。生きて演じているから、それでいい。中には「せりふは一字一句変えるな」と嫌がるディレクターや作家もいるけど、みんなの意見を聞きながら一番面白くなるものを探す。僕もうまくいったり失敗したり、四六時中探しているんだけどね。面白いぞ、この仕事は。
ドラマは5月30日午後9時からオンエア。