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どちらもベルギーのブリュッセルを舞台に、シュールでブラックなコメディーの形を借りて、人間の生と死について描いた二作が相次いで公開された。
まずは、『トト・ザ・ヒーロー』(91)『八日目』(96)などで知られるベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『神様メール』から。
神様(ブノワ・ポールヴールド)は、ブリュッセルのアパートに家族と一緒に住んでいて、パソコンを使って世界を操作している。ところが、ある日、神様の10歳の娘エア(ピリ・グロワーヌ)が、神様のパソコンから人々に余命を知らせるメールを送ってしまったからさあ大変。
エアはパニックに陥った人間たちを救済しようと街に繰り出し、神様も娘の後を追うが…という何とも人を食ったような設定の寓話(ぐうわ)で、ドルマル監督がキリスト教=神を徹底的にちゃかしているところが面白い。
野球カードが大好きなエアの母親(女神)、余命を知って冒険家になった会社員、スナイパーに転職した保険屋…と、神様とエア以外にも変な、妙な人物ばかりが登場する。中でもゴリラと恋をする有閑マダムを天下の名女優カトリーヌ・ドヌーブが演じていたのには驚いた。
彼らが集うラストには“ある奇跡”が用意されているのだが、それは見てのお楽しみ。この映画のテーマはあくまでも「もし余命を知ってしまったら人間はどう行動するのか?」だということをお忘れなく。