【映画コラム】すごいぞ唐沢寿明!『イン・ザ・ヒーロー』

2014年8月30日 / 18:05

(C) 2014 Team REAL HERO

 映画やドラマで、ヒーローや怪獣の特殊スーツを着て演技をするスーツアクター一筋の男の人生を描いた『イン・ザ・ヒーロー』が9月6日から公開される。

 ブルース・リーに憧れ、スーツアクターとなった本城渉(唐沢寿明)はこの道25年の大ベテラン。だが、いつか自分の顔と名前を出して映画に出演するという夢を決して諦めてはいない。そんな本城にハリウッドのアクション大作から出演オファーが舞い込むが、それは命も落としかねない危険なスタントが要求されるものだった。

 『蒲田行進曲』(82)にも通じる裏方俳優の意地と誇り、悲哀を、自身もスーツアクター出身の唐沢が見事に体現。同じくスーツアクターの経験を持つ寺島進、「仮面ライダーフォーゼ」で主人公を演じた福士蒼汰らが脇を固め、『太秦ライムライト』(13)に続いて、無名の主人公と絡む大スター役で松方弘樹も登場する。

 さらに「仮面ライダー」シリーズや「戦隊」シリーズを制作してきた東映が、自ら楽屋裏を明かすような興味深いシーンも随所に見られる。となると、まるで俳優たちや映画界、ドラマ界の外伝を見ているようなリアリティーが感じられ、その姿に感情移入せずにはいられなくなる。

 そんな本作を貫くのは「俺がやらなきゃ誰も信じなくなるぜ。アクションには夢があるってことを」という本城のせりふに象徴される、決して夢を諦めないネバーギブアップの精神。

 それを証明するかのように展開するクライマックスの、本城による炎の中での忍者100人斬りのシーンが圧巻だ。唐沢自身が「CG全盛の時代にここまで本格的な殺陣や立ち回りをやる機会はないと思う。50歳で体を張った」と語るように、このシーンでは本城と唐沢が完全に一体化し、見る者の心を打つ。

 名もなきヒーローの姿を通して「年を取ってもやればできる」「夢を諦めるな」と訴え掛ける本作は、見た者が思わず「すごいぞ唐沢寿明!」と声を大にして言いたくなる映画に仕上がっている。(田中雄二) 


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