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『愛のむきだし』や『新宿スワン』などの園子温監督による初のオリジナルドラマ「東京ヴァンパイアホテル」(全9話)が、6月16日からAmazonプライム・ビデオで一挙配信される。地球と人類の滅亡を図るヴァンパイアと、人類との熾烈(しれつ)な戦いを描く本作で、共にヴァンパイア役を演じ、本格アクションに初挑戦した夏帆と満島真之介が撮影の裏側を語った。
満島 とても楽しんでやっていました。日本の作品でこういう役ができることはあまりないだろうと思ったので、持っているものを全て出してしまおうと。ヴァンパイアは日本の文化にはないものなので、妖怪や幽霊とは全然違うもの。それを演じられるのだからわくわく感しかなかったし、自分に外国の血が入っている部分は(ほかの役柄では)ずっと扉を締めていたので、楽しく演じさせていただきました。
夏帆 撮影をしながら園さんが台本を書かれていたこともあり、私は最初にもらった台本を読んだだけでは役柄がどういう方向に行くのかつかめなくて大変でした。ヴァンパイアになる理由は話が進むにつれて分かりますが、最初は謎が多いのでどう演じたらいいのか不安でした。でも、園さんの作品は現場で生まれるものを大事にすることが多いので、その場で相手役の方と作っていった感じです。完成した作品を見た時に「私ってこんな顔ができるんだ!」と今まで自分が見たことのない顔を撮ってもらったことにも驚きました。
夏帆 役柄を選ぶ時に、自分のイメージにない役や新しい役をやろうというよりも、面白い作品に出たいという気持ちの方が強いです。だから、今回も特に新しい自分を見せてやろうという感じではなかったです。意識の変化としては、10代のころからこの仕事をしていますが、「ずっと続けていこう」という強い意識がないまま漠然と続けてきて…。でも、明確に「これ」というきっかけがあったというよりかは、いろんなタイミングが重なって、20代に入ってどんどん仕事が楽しくなってきました。
満島 僕は10代のころに、2年ほど園さんの助監督や台本の打ち込みをしている時期がありました。『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』『ヒミズ』よりも前の時期です。そこから僕は旅に出てしまったので、その後は一緒にいられなかったのですが、その時の(園監督の)40代最後の葛藤や、日々のパワーを見ていたからこそ、時を経て今ここで(監督と役者として)会えることはとてつもない喜びでした。
満島 全く思っていなかったのですが、人生が流れていくうちに、演じる側に立っていました。今回、園さんから山田役の連絡が来た時は「ついにその時が来た!」という気持ちがあふれました。(園監督と)ここまで距離感の近い人は僕ぐらいしかいないと思うので…。園さんの昔からのうっくつした思いや、家庭環境などを全て知っている中で、山田というキャラクターは、園さんが残したかった全てをつぎ込んだ集大成のような気がしていたんです。そのぐらい山田役のオファーは、身が引き締まりました。
夏帆 そうだったんですね。私は実際に対峙(たいじ)してお芝居をするシーンが多くはなかったので知らなかったです。
満島 僕もそういうことを言うのは恥ずかしかったし、ちゃんと感じておこうと思って。だから、クランクアップの時はウルッときてどうしょうもなかった。廊下で神楽坂(恵)さんと話している時に、いろんなことがフラッシュバックしちゃったんです。スタッフもみんな泣き出して、園さんも感極まって「もうワンカットだけ撮っていいか!」と。そこで撮ったワンカットが本編に使われています。山田役と僕と園さんの全てが一体となった瞬間でした。
満島 夏帆ちゃんの演じたKは、拳銃も刀も使うし、何でもありで。それなのに、アクションの練習をする時間がほとんどなくて、撮影中はずっと刀を持ってスタジオを歩いていました。少しでも空間と時間があれば振っていましたね。
夏帆 今思えばその時の精神状態って普通じゃなかったです(笑)。時間がないのもありましたけど、ギリギリの空気がそうさせるというか。撃たれても刺されても急所でなければ死なないので、撃たれながら斬ったりアクションを続けていくのは大変でした。
満島 ただのヴァンパイア作品を作りたかったわけではなく、根底には園さんの強いメッセージがあると思います。日本と世界との関わりの中で、日本はこれからどうしていくべきか、そういう時事的なことや、観念的な物もしっかり入っています。僕の演じる山田のせりふもそういう思いがこもっていくものになっていきます。園さんが語りたいこと、叫びたいことを、山田を通すから言える。一石を投じるものになると思います。
夏帆 映画にもドラマの枠にもない、今まで誰も見たことのない作品になっていると思います。とりあえず1話を見てほしいです。
(取材・文/中村好伸)
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