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『告発の行方』(88)と『羊たちの沈黙』(91)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジョディ・フォスターの、通算4本目の監督作となる『マネーモンスター』が公開された。
人気財テク番組「マネーモンスター」が“買い時”として紹介した投資会社の株が暴落し、多額の損失が発生した。そんな中、番組に従って大損をしたというカイル(ジャック・オコンネル)が銃を手に生放送中のスタジオに乱入。番組パーソナリティーのリー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)に爆弾を仕込んだベストを着せて人質とする。カイルは、番組の罪と損失の真相を生中継で明らかにすることを要求する。
本作は、金融とメディアという厄介な問題を扱いながら、実に手際良く、てきぱきと分かりやすく処理して飽きさせない。株の世界の複雑怪奇さばかりが際立ち、見る者をけむに巻いた『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)とは大違いだ。
また、上映時間は約100分だが、映画内の時間経過もほぼ同じように進行するという“リアルタイム劇”としてサスペンスを盛り上げる。これはボクシング映画『罠』(49)や西部劇『真昼の決闘』(52)といった古典映画のパターンを踏襲している。
しかも、小難しい社会派の告発劇ではなく、時折ユーモアも交えながら、あくまでエンターテインメントとして楽しめるように仕上げている。これは題材の類似という点からも、銀行強盗を描いた『狼たちの午後』(75)やテレビ局を舞台にした『ネットワーク』(76)といったシドニー・ルメットの諸作を想起させる。
そして、暴落の真相が明らかになるにつれて、格差社会、情報社会の実態が浮かび上がり、ゲイツとディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)に“真実を報道する”というテレビ人としての本分がよみがえってくるあたりは、ヒーロー物のにおいすら漂う。
もっとも、パティをはじめ、投資会社の広報担当、カイルの恋人らが、皆“男前な女性”なのに対して、お調子者のゲイツ、犯人のカイル、投資会社の社長らは、いささか駄目な男として描かれている。ここに、男社会の映画界で女優、監督として、長年にわたって活躍してきたジョディの心情が反映されていると言ってはうがち過ぎだろうか。
いずれにしても、実に“映画らしい映画”を見せてくれた監督ジョディ・フォスターの手腕に脱帽だ。(田中雄二)