【映画コラム】永遠の若さは果たして幸せなのか!? 『アデライン、100年目の恋』

2015年10月17日 / 17:12
(C) 2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC, KIMMEL DISTRIBUTION, LLC AND LIONS GATE FILMS INC. All Rights Reserved

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 奇跡的な出来事から29歳のまま年を取らなくなったヒロインがたどる数奇な人生を描くファンタジーラブロマンス『アデライン、100年目の恋』が公開中だ。

 1937年、29歳のアデラインは、自動車事故に遭い川に転落。意識不明となるが、落雷のショックで奇跡的に息を吹き返す。すると不思議なことに彼女の肉体は老化が止まる。

 やがて、周囲の目を気にしたアデラインは娘と別れ、10年ごとに名前と住居を変え、孤独な日々を過ごしてきたが、実年齢が106歳となった2014年の大みそかに魅力的な青年と出会う。

 『フォーエヴァー・ヤング 時を越えた告白』(92)『レイト・フォー・ディナー』(92)の冷凍睡眠や、自らの意思によって成長を止めた『ブリキの太鼓』(79)とも違う、新種の“年を取らない主人公の物語”。

 そんな本作の見どころは、美女を主役に、照れることなくロマンチック&ファンタジックな世界を貫き通し、実際にはあり得ないおとぎ話に説得力を持たせた点にある。これぞハリウッド映画の王道だ。

 特にアデライン役のブレイク・ライヴリーは、衣装、髪形、メーク、小道具、言葉遣いなどを変えることで、見た目は29歳のままで、さまざまな時代を生きるアデラインを華麗に体現。女優冥利(みょうり)に尽きる役柄を手にしたと言っても過言ではない。

 また、古い映画館、資料館、洞窟、金門橋…といったノスタルジーを感じさせるサンフランシスコの風景も一助となっている。

 不老不死や若さの継続は人類にとっては永遠のテーマ。最近は“アンチエイジング”という言葉を目にすることも多い。だが本作は、“永遠の29歳”という奇跡を手にしながら、必ずしも幸せではないアデラインの姿を通して、自然に年を取ることの意義を肯定している。

 それは、年を取らないヒロインとは対照的に、ハリソン・フォード(かつてのアデラインの恋人役)とエレン・バースティン(年上に見えるアデラインの娘役)が見せた“いい老け方”、そして粋なラストシーンが示した“新たな奇跡”にも象徴されている。(田中雄二)


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