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第44回「築城」で、ついに真田幸村(堺雅人)の活躍の舞台となる出城“真田丸”が完成。次週、第45回「完封」で大坂冬の陣がいよいよ幕を開ける。巨大なオープンセットが作られた真田丸を中心に、どのような合戦絵巻が繰り広げられるのか、期待に胸が膨らむ。
その一方、このところ、女性たちの動きも慌ただしくなってきた。大坂城では、牢人たちに主導権を渡すまいと大蔵卿局(峯村リエ)が軍略に口出しをしているが、その奥に控えているのが豊臣秀頼(中川大志)の母・茶々(淀)だ。
一般に気の強い女性というイメージが定着している茶々は、近年の大河ドラマでも「江 ~姫たちの戦国~」(11)の宮沢りえ、「軍師官兵衛」(14)の二階堂ふみなどが、それを踏襲して演じてきた。
ところが「真田丸」の茶々は、今までとは少々異なる。表面的には穏やかで人当たりの良さそうな雰囲気を漂わせながらも、その内面は芯が強く、自分の意志を曲げない女性。画面から伝わって来るのは、そんな人物像だ。
演じる竹内結子は、強い女…というよりは、清潔感あふれるたたずまいが持ち味。一見、茶々のイメージからはかけ離れているようにも思えるが、この起用は脚本を担当する三谷幸喜の狙いらしい。
『NHK大河ドラマ・ストーリー 真田丸 後編』(NHK出版刊)などのインタビューによると、三谷は竹内に「言葉に裏のない無邪気な人として演じてほしい」とリクエストしたという。竹内の個性をつかんだ配役と言えるが、同時に小悪魔ぶりを発揮するのが今回の茶々だ。
第43回「軍議」では、幸村が籠城する気のないことを知ると、素知らぬ顔で軍議が籠城に決まるように根回し。直接その姿を描かない分、裏に秘めた小悪魔ぶりが強く印象づけられた。大坂の陣でも、その小悪魔ぶりが存分に発揮されるだろう。
男を惑わせて破滅に導く女のことを映画用語では「ファム・ファタール」(フランス語で「運命の女」)と呼ぶが、茶々はまさに幸村にとってのファム・ファタールだ。
また、次々と入れ替わっていく男優陣に対して、竹内をはじめとした女優陣は序盤から継続して出演し続けている者が多い。それによって、女たちの存在感が増している。
その一人が、徳川家康(内野聖陽)の側室・阿茶局(斉藤由貴)である。事あるごとに家康を叱咤(しった)激励し続け、ついには天下人にまで導いた。第42回「味方」でも、豊臣家は「遠国でおとなしく暮らしてもらう」と考える家康に対して、「打ち滅ぼしてしまいなさい」とけしかけるなど、強気な性格は健在だ。
『NHK大河ドラマ「真田丸」完全ガイドブック PART.2』(東京ニュース通信社刊)のインタビューで斉藤は、阿茶局を演じることについて「大坂の陣で、徳川方の和議の使者として大坂城へ出向くことになります。(中略)阿茶局を演じる際の意識は、初登場の回からそこ一点に集中させています」と語っている。その見せ場は、もう間もなくやって来る。
第43回「軍議」では、茶々の妹の初(はいだしょうこ)も登場。徳川秀忠の妻の江(新妻聖子)を含めた三姉妹も出そろい、女性陣の顔ぶれも大坂の陣に向けて整った。彼女たちの活躍が「真田丸」のクライマックスを華やかに彩ってくれるに違いない。
(ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)