映画『沈黙-サイレンス-』の公開初日舞台あいさつが21日、東京都内で行われ、出演者の窪塚洋介、浅野忠信、イッセ-尾形、塚本晋也、小松菜奈が登壇した。
本作は、遠藤周作の歴史小説『沈黙』と出会ったマーティン・スコセッシ監督が、28年の時を経て映画化したもの。
物語の舞台は17世紀の江戸時代初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎で、悩める信徒キチジローを演じた窪塚は「スコセッシ監督からキチジローの“人となり”を具体的に演出された記憶がないんです」と述懐した。
オーディションの現場でも「カメラがないのに『カメラを回せ』って。『君はもうキチジローだからカメラを回していいんだよ』っておっしゃった」とエピソードを明かし、「それだけ、僕の中にあるキチジロー像を信頼してくれていたんだと思う」と感謝の思いを口にした。
また完成版を見た時に「あることに気付いてハッとした」という窪塚。当初は、キチジローを“イノセント”に演じる自分を「スコセッシ監督が気に入ってくれていると思っていた」が、実際は「僕がよりイノセント、ピュアに見えるシーンは一切カットされていた。分かりやすく言うと、涙を流してどうこくするシーンもあったんだけど、そういうものはあえて使っていなかったんです」と明かした。
窪塚は、本心として「ハリウッドに自分の演技をアピールするチャンスみたいな感覚が正直あった」と明かしつつ、現場では「『それだと(演技を)やり過ぎだから』ということは一言も(監督から)言われなかった」といい、常に「『グレート!』『ワンダフル!』と毎日、監督に乗せられ“踊って”帰ってきたんです」と語り、苦笑いを浮かべた。
スコセッシ監督の場合は「駄目でも『ワンダフル、もう1回!』『アメージング、もう1回』なんですよ。役者を乗せるというのが骨身に染みついているのかもしれませんが、驚愕(きょうがく)すると同時に、そこがあの人の偉大なところだと感じました」と尊敬の念を口にした。
また、本作のテーマでもある“弱者”を語る中で、窪塚が東日本大震災などで生まれた「日本の弱者」の存在に言及し、政府を痛烈に批判する一幕もあった。