<ライブレポート>hitomi 代表曲を“今”に鳴らす、【hitomi Live 2026 – STAND BY】開催

2026年4月3日 / 18:30

 2024年に30周年イヤーを迎えたhitomiが3月28日、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライブ【hitomi Live 2026 – STAND BY】を開催した。ドラム、ベース、キーボード、パーカッション、ギター2人という6人編成のバンドを従え、90年代から愛され続ける代表曲の数々を、懐古に寄りかかることなく、骨太なバンドサウンドで現在形として鳴らしてみせた。

 幕開けは3rdシングル「CANDY GIRL」。白い衣装のhitomiがステージに現れ、鮮烈なシンセイントロが響いた瞬間、一部着席スタイルの会場は総立ちになった。自然発生的に湧き上がったハンドクラップは、間髪入れず投下された「In the future」でも続き、hitomiもその熱気に溢れんばかりの笑顔で応えていく。リズミカルでプレイフルなAメロ、切なさを滲ませるBメロ、そしてスリリングに高揚していくサビ。マイナーとメジャーを行き来する“小室哲哉印”のメロディを、抜けのいいハイトーンボイスが鮮やかに彩る。90年代という時代を象徴したアイコンでありながら、その歌声は今もなお瑞々しい輝きを失っていない。

 「Sexy」では、〈Pa pa pa pala〉のスキャット、〈Sexy Sexy I’m Sexy〉のフレーズがオーディエンスのシンガロングを誘い、フロアの一体感は一気に加速。hitomiはキレのいいステップを踏みながら、パワフルかつチアフルな歌声で空間を引っ張っていく。

 3曲を駆け抜けたあと、「みなさん、改めましてこんばんは! hitomiです。今日はたくさん集まってくれて本当に嬉しいです」と笑顔で挨拶するhitomi。「渋谷といえば、私にとって聖地。高校生の頃はよく109に通っていましたよ。だから土曜日はいつも混んでいるのもよく知ってる」と話して客席を和ませつつ、「今日はみんな覚悟していてくださいね。たっぷり歌いますから。みなさんの思い出と照らし合わせながら聴いていただけたら嬉しいです」と、この日のライブへの想いを伝えた。

 ここから披露されたのは、「INNER CHILD」「Japanese girl」「MARIA」という、2000年代初頭にかけてのhitomiの表現の広がりを感じさせる楽曲群だ。「INNER CHILD」は、バウンスするミドルテンポに、ひねりの効いたコード進行、どこかサイケデリックな気配も滲ませるサウンドが重なっていく。今は亡き渡辺善太郎による、ビートリーでシンフォニックなアレンジが楽曲に豊かな奥行きを与え、ドリーミーな展開が会場の空気を心地よく揺らしていった。

 続く「Japanese girl」もまた、渡辺のアレンジが光る1曲。80年代のニューロマンティックや90年代ブリットポップの感触を取り込んだサウンドは、小室哲哉プロデュース期とは異なるhitomi像を鮮やかに描き出す。〈不器用なコンプレックスをバネに 強くなりたいという決意!〉というフレーズに象徴される“Love Life Style”の感覚もまた、時代を経た今なおまったく色褪せない。

 「MARIA」を歌ったあと、彼女は「ここからちょっとゆっくりした曲を歌いたいと思います」と告げ、ハイチェアに腰掛けてアコースティックセットへ。「体温(蹲)」と「there is…(LOVE)」は、デビュー30周年企画『Re:light Project』の一環として生まれた再解釈の楽曲だ。「体温(蹲)」では持田香織が、若い頃の心情を現在の感覚からあらためて見つめ直し、「there is…(LOVE)」では伴都美子が、オリジナルにあった不安や覚悟に対して、時を経た大人の視点から“愛”という主題で応答してみせた。

 「素敵な歌詞で、歌いながら泣きそうになってヤバイ! ってなった」と笑いを誘いながらも、「2人に改めて感謝の気持ちを伝えたい」としみじみ語るhitomi。自身の楽曲の多くで作詞を手がけてきた彼女は、かつて誰かに詞を託したりすることに葛藤があったという。今では誰かに委ねることの面白さや豊かさも知り、「今回は2人がどんな視点を加えてくれるのか、hitomiをどう見てくれているのか、2人の解釈が入ることにワクワクしました」という言葉には、30年の時を経た表現者としてのしなやかさが滲んでいた。

 ライブ中盤、ゴスペルの要素も散りばめられたスケール感あるソウルポップチューン「by myself」を響かせたあと、「キミにKISS」ではヘヴィなギターサウンドに負けない力強いボーカルを聴かせる。ここでも渡辺善太郎のアレンジは冴えわたり、どこかエイミー・マンを思わせるような、ポップでありながら一筋縄ではいかない陰影を楽曲に与えていた。

 フジテレビ系ドラマ『できちゃった結婚』主題歌としても知られる「IS IT YOU?」は、「INNER CHILD」と同様、ひねりの効いたコード進行と、その上を漂う浮遊感たっぷりのメロディが強い印象を残す。メロトロンサウンドを散りばめたクラシカルなアレンジは、ビートルズやプロコル・ハルムを思わせる趣もあり、力強いサビとのコントラストも鮮やかだ。hitomiといえば小室哲哉プロデュースによる90年代の楽曲に耳が向きがちだが、この日のライブでは、渡辺善太郎が関わったサウンドの魅力にあらためて耳を奪われた。

 続く「innocence」も、ノスタルジックなピアノのループから始まり、バウンスするリズム、モーグシンセを思わせる音色が重なっていくなか、hitomiは伸びやかな声で高揚感あるメロディを歌い上げる。途中、サビで起こったシンガロングの光景に感極まったのか、涙をこらえるような表情を見せる場面も。歌い終えた瞬間、会場には大きな歓声が広がった。

 「改めてみんなの熱量にめっちゃ感動しています。今は嫌なニュースも多いけど、みんなには優しさを持って生きてほしい」と語ったhitomiは、再び声を詰まらせる。フロアから飛んだ「がんばれ!」という声に励まされながら、「愛をもって生きていこう!」と訴える姿が印象的だった。

 「やばいね、こんなところで泣いちゃって」と戯けてみせて場を和ませたあと、ここからはライブ前に観客から募った質問に答えるコーナーへ。「きのこ派? たけのこ派?」といった心が緩むようなものから、「娘さんと仲良くする方法を教えてください」という母親世代のファンならではの質問、「今年、挑戦したいことは?」といった未来に向けた問いまで、多岐にわたる質問にひとつひとつ真摯に、時にユーモアも交えながら応じていた。

 ライブは早くも後半戦へ。疾走感あふれる「Understanding」では、サビでオーディエンスとともに腕を振り上げ、ドラムが縦横無尽に駆け巡る「I am」ではフロアが揺れるほど飛び跳ねる。「BUSY NOW」では、エフェクティブなギターやスライドギターが、どこかトッド・ラングレンやELOを思わせるきらびやかさを放ち、本編ラストの「GO TO THE TOP」まで一気に駆け抜けた。

 鳴り止まないアンコールに応えて再びステージに姿を現したhitomiは、テンガロンハット姿で「SAMURAI DRIVE」を披露。全力で歌い上げる姿に、会場のボルテージも最高潮へと達していく。

 「もう、このまま死んでもいいっていうくらい幸せすぎる。本当にありがとう!」と叫んだあと、笑顔でフロアに投げキッスを送りながら、「デビューから31年目に入って、これからよりたくさんの人に曲を届けたい。もちろん、20代、30代とはまた違う方法で、自分のペースを保ちながら前に進んでいきたいと思います。みんな、ついてきてくれますか?」と呼びかける。会場からは大きな拍手と歓声が上がった。

 さらに、ドラマ『この愛は間違いですか~不倫の贖罪』のオープニング・テーマにも起用された「Stand by…」を歌い、レーベルメイトでもある男女2人組ロックバンド・Nikoんが楽曲提供した、ハードでポップな「Tokey-Dokey」を披露。最後はもちろん、代表曲「LOVE 2000」。会場一体となったシンガロングが、この日のライブを幸福感たっぷりに締めくくった。

 30周年を経た今も、hitomiは過去の輝きに寄りかかることなく、自身の代表曲をあくまで現在進行形のバンドサウンドとして鳴らしていた。そこには、長いキャリアを重ねてきたからこその余裕もあれば、なお前に進もうとする意志もある。90年代の記憶を鮮やかによみがえらせながら、それだけでは終わらせない。その姿は、hitomiというアーティストが今もなお更新され続けていることを、はっきりと示していた。

Text by 黒田隆憲
Photo by Yuma Totsuka

◎公演情報
【hitomi Live 2026 – STAND BY】
2026年3月28日(土)東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE


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