緋村剣心の曲も披露した涼風真世、“声の至芸”で魅了したビルボードライブ公演のオフィシャルレポートが到着

2025年5月2日 / 15:00

 春のうららかな陽気に誘われるかのように毎年この季節、“歌の妖精”がビルボードライブ横浜に舞い降りる──。2025年4月19日(土)、涼風真世が4年連続となる春のビルボードライブ横浜公演【涼風真世 THE FAIRY ~LOVE & SMILE~】を開催。昨夏から準備を進めてきたというセットリストには、タイトル通り“LOVE”や“SMILE”をテーマにしたミュージカルや宝塚歌劇のナンバー、大切に歌い続けているオリジナル曲が並び、声優としても活躍してきた彼女ならではの「アニメソングメドレー」も登場。夜の2ndステージでは、フロアを埋めた幅広い年代のオーディエンスだけではなく、ライブ配信の視聴者もその美声で酔わせた。

 来年にはデビュー45周年を迎える涼風。宝塚歌劇団在団中から類まれな歌唱力を発揮し、月組トップスター時代には【ベルサイユのばら】のオスカル、【PUCK】の妖精パックなど多くの当たり役に恵まれ、絶大な人気を集めた。退団後も【マリー・アントワネット】のタイトルロールをはじめ数々のミュージカルや舞台、ドラマに出演。声優や歌手としても確かな足跡を残してきた。心をわしづかみにする深い低音から、クリアで澄み切ったファルセットまで、幅広い音域を自在に行き来する唯一無二の歌声が、今年はどのような形で放たれるのか。キラキラと鐘の音が響き、5人編成のバンドメンバーによるゴージャスなサウンドが奏でられると、いやが上にも期待が高まった。

 トップを飾ったのはオリジナル曲「空だけはそこにある」。和モダンな花柄のロングジャケットを華麗に着こなした涼風が颯爽と現れ、「天国とも繋がっている」と感じている“空”への想いを、伸びやかなメロディに乗せて歌う。安全地帯が好きだった涼風の夢が叶い、松井五郎に作詞をしてもらった大切な一曲だ。

歌い終えると、「本日はようこそ! わたくし昔、妖精、今――?」の問いかけに、観客が「妖怪!」とおなじみのコール&レスポンス。「大きな声で言っていただけて幸せです!」と言うと、会場いっぱいに笑顔の花が咲く。「ちょうど1年前の今日、このビルボードライブ横浜でコンサートをさせていただきました」と喜びの表情。「いつも涼風を支えてくださりありがとうございます」と満面の笑みを見せる。

続いて披露したのは、竹内まりやの「元気を出して」。透明感のある歌声に、ストリングスやピアノの優しい音色が心地よく重なる。「ご一緒に!」とオーディエンスにもマイクを向け、一体感のある空間へと導く涼風。その後、「いつも皆さんから“愛”と“笑顔”をいっぱい頂いているので、少しでもお返しできたらと思っています。次のメドレーで私からの“愛”と“笑顔”を受け取ってください」と伝え、七変化の声を持つ彼女ならではの15曲におよぶ「アニソンメドレー」が始まった。

 MCのキュートな声色から一変。彼女が1996年から声優を務めた緋村剣心の存在を瞬時にまとい、ヴォーカルアルバム『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』に収録の「愛する人を守るために」を、メロウな低音ボイスで歌い上げる。約30年ぶりの披露というサプライズ。薫への想いや、戦う男の覚悟が伝わる切なくも甘い歌声が、聴衆の心を感動で潤していく。

その後は、マーチ調のリズムに乗せて足踏みをしながら歌う涼風に手拍子が沸き起こった『鉄腕アトム』、ジャズアレンジでしびれるような色気を醸し出す『妖怪人間ベム』、乙女の声色で豊かな風景を引き出す『アルプスの少女ハイジ』など、名作アニメの曲が涼風の美声で鮮やかな色を放つ。愛らしいセリフまで挟んだ『ドラえもん』の歌の後に、深い未知なる地底に達するかのような低音アカペラで、<さらば~地球よ~>と「宇宙戦艦ヤマト」を歌った瞬間も、しびれるようなひとときだった。

さらに『科学忍者隊ガッチャマン』『デビルマン』を圧巻のビブラートや、がなりを効かせて歌う様はひたすら格好良く、手拍子が止まらない。一転、突きぬけるようなファルセットから始まる『ベルサイユのばら』の「薔薇は美しく散る」を、華麗なクリスタルボイスで。オスカル役者の彼女が歌う貴重な一曲となった。『天空の城ラピュタ』より「君をのせて」や、『名探偵コナン』の「キミがいれば」も、穏やかな波にたゆたうような心地よい歌声で披露。メドレーの最後を飾ったのは、TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』放送時に彼女が歌い大ヒットした名曲、「涙は知っている」。晴れやかな声色で、ヴァイオリンの旋律に体を揺らしながら歌い、大きな拍手が送られた。

昨年の「懐かしいCMソングメドレー」もかなりのボリュームだったが、今年の「アニメソングメドレー」も耳に贅沢。洗練されたアレンジや照明の美しさもあいまって、ビルボードの空間にマッチする夢のような時間に。涼風は衣装チェンジのためフロアから一度去ると、大きなスクリーンが降りてきて、リハーサル風景が映し出される。そこで涼風は、昔よく見ていたアニメや、『るろうに剣心』の声優オーディション秘話、今ライブの音楽監督・ピアノ演奏を務める三枝伸太郎への信頼感などを語り、飾らない人柄や強固なチームワークが伝わってくる。

 そうしてライブは後半へ。ここからは宝塚やミュージカルのナンバー、歌手の涼風真世としての曲が続いていく。フリル付きの黒いジャケットとパンツに、フワフワな金髪ヘアという絶妙なバランスのコーディネートで客席から登場。月組男役スターとして主演した【リラの壁の囚人たち】のセリフを語りながら、ゆったり歩いてくる。ドイツ占領下のパリ下町、許されない恋に葛藤する英国特務工作員エドワードとして、「我が若かりし頃」を一語一語艶やかに歌い上げた涼風は、「今、当時の舞台の中にいるような錯覚を覚えました」と、パティオのセットが目に浮かぶという。スマートな立ち姿と、さらに深化した男役の声。当時は【ME AND MY GIRL】で女役のジャッキーを演じた直後でもあり、「男役ってこんなに気持ちいいのだと思いました!」と打ち明けた。

 続いて、イントロから大きな歓声があがった「愛の媚薬について」。宝塚の人気レビュー【ル・ポァゾン 愛の媚薬】のオープニングに、涼風がソロで歌った名曲。官能的なメロディに壮大なビブラートを響かせ、作品世界へと強烈にいざなったその表現力は、変わらないどころかよりパワーアップ。続いてアップテンポな「カムバック・ラブ・アゲイン」(【カウントダウン・1991】より)を、うって変わった明るい声で届け、振り幅の妙を再び感じさせる。「宝塚時代は濃い濃い青春を過ごさせていただきました」と、約12年の宝塚人生を幸せそうに振り返った。

 退団後もずっと舞台に立ち続けてきた涼風。そのキャリアの中から、「この曲を選びました」と、ミュージカル【シー・ラヴズ・ミー】より「手紙のあなたは」を、美しいファルセットでナチュラルに届ける。その曲が終わると照明は暗いまま、うつむいて何かが乗り移ったように激しいリズムに身をゆだね、歌い出したのが「幻の黄金を求めて」。ミュージカル【マリー・アントワネット】の日本初演でタイトルロールを演じたとき、山口祐一郎が錬金術師のカリオストロとして歌った、どこか不気味で激しい魅惑的な大ナンバーだ。男性の声の響きで音符を捉え、ダイナミックな声圧で深く鋭く、複雑な旋律を描いていく。歌い終わると大喝采がフロアを埋めた。涼風は「クー! 気持ちよかった! ミュージカル界の帝王(=山口祐一郎)が乗り移った気持ちで歌ってみました」と話し、笑いを誘う。彼女ならではの“声の至芸”を体感した思いだ。

 そしてライブも終盤のクライマックスへ。2020年、還暦を迎えたのを機に自ら作詞をして生まれた「A-YU-MI(歩み)」を、ミラーボールの光が煌めくなか、まさにキラキラとした表情で歌う。<これからの人生も迷うことなくA-YU-MI(歩み)続けよう 感謝と愛を忘れずに>というフレーズは、見守ってくれる人たちへの偽りない想い。間奏ではオーディエンスの一人ひとりと目を合わせるかのように、会場の端から端までゆっくり笑顔を向け、彼女の優しさがフロアを包み込む。続いて、敬愛する玉置浩二が涼風のために書き下ろした「眠りの果て」を、情感に満ちたボイスで。この曲は人間の生と死の原点に気づかせてくれるような、深淵な世界観が印象的だ。その歌声の余韻を残したまま、客席後方の扉へと消えた涼風。

 アンコールを求める手拍子が鳴りやまず、新たにスパンコール煌めく白いドレススタイルで登場。故郷・宮城への想いも込めて毎回必ず歌う、東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」を届け、オーディエンスにも呼びかけて会場一体となってのコーラスへ。「この曲もみんなと一緒に口ずさめるので嬉しいです」と。今年44周年であることにも触れ、「45周年、50周年に向けて、体力、気力、頭の回転……いろんな意味で健康に気をつけて、大好きな歌をもっと歌えるようになりたいと思います。皆さん、ついてこいや~!」と頼もしくユーモアを交えて言い放ち、ワーッ! というどよめきと歓声が広がった。

 ラストソングは、40周年記念アルバム『Fairy ~A・I~ 愛』で誕生した「地球の涙」。小池修一郎(作詞)×SUGIZO(作曲)という豪華なコラボレーションに、涼風が魂を吹き込んだこの曲は、気候や紛争、さまざまな問題を抱える地球への壮大なメッセージが刻み込まれている。涼風は物語の主人公を演じるかのように、指先まで雄弁に感情を乗せ、メロディと言葉を解き放つ。ドラムもピアノも、激しいギターの旋律も、頂点の盛り上がりへ。数々の役を演じ、さまざまな声を探り、日々歌声を深化させてきた彼女ならではの表現力で、最高のエンディングとなった。

 「歌が歌える、こんなに幸せなことはございません。皆さまが支え、見守ってくださっているおかげです」と感慨深く語った涼風。「今日はなんと麻乃佳世さんも!」と、月組トップコンビの相手役だった麻乃佳世も観客として駆けつけていると紹介。ここにも“愛”がまたひとつ。「叶うなら、来年も開催したいな」と、ビルボードライブ横浜への“愛”も述べた涼風は、来年も再びこの場に舞い降りてくるかもしれない。
 
Text:小野寺亜紀
Photo:小林邦寿

【涼風真世 THE FAIRY ~LOVE & SMILE~】
1.空だけはそこにある
2.元気を出して
3.アニソンメドレー
4.我が若かりし頃
5.愛の媚薬について
6.カムバック・ラブ・アゲイン
7.手紙のあなたは
8.幻の黄金を求めて
9.A-YU-MI(歩み)
10.眠りの果て
EN01.花は咲く
EN02.地球の涙


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