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人間一人ひとりの人生には変化がつきものである。それは草木が目を出すように少しずつ変わることもあれば、何かの出来事をきっかけに劇的な変化を迎えることもある。上野大樹はそんな様々な“変化”を時に美しく、時に切なく、時に晴れやかに音楽にしてきたアーティストだ。全国14か所で開催されたツアー【新緑 -shinryoku-】ファイナル公演のMCでも、今年4月にリリースしたメジャーデビューアルバム『新緑』の制作やリリースツアーのなかで、様々な新しい自分の気持ちに気がついたという旨を明かしていた。初めての感覚に喜びを見せる彼の自然体の佇まいは、まさに新しい芽吹きを体現する新緑のようだった。
今ツアーでは、大阪・BIGCAT公演以来のバンド編成でのライブとなった東京・I’M A SHOW公演。ギターを抱え「夏風を待って」で爽やかかつエネルギッシュにツアーファイナルの幕を開けると、「夏の終わり、【新緑】一緒に盛り上がっていきましょう!」と呼び掛け「航る」へ。ポジティブなムードが立ち込める雄大なサウンドスケープは堂々としたボーカルを美しく照らす。彼がこのツアーで得た充実が、序盤2曲からダイレクトに伝わってきた。
高校1年生の夏、幼い頃から続けていたサッカーが怪我によりできなくなり、家から近い海を眺めることが多かったという彼は、夏になると故郷を思い出すという。今回のツアーで初めて赴く場所が多かった彼は、「みんなの故郷もすごくいいところで、余計に自分の故郷のことを思い出しました。僕の故郷を歌った曲で、みんなの故郷に行った思い出を歌います」と告げ、「海街ち」を歌い始めた。切なさや悲しみの経験から生まれたであろう同曲は、今の彼が歌うと水面に揺れる太陽のようなきらめきを放つ。彼がこのツアーで観た景色や感じた思い、今の彼が思う過去のことなどが混じり気なくこちらの心にまで染み渡るようだった。
ギターを置いてハンドマイクパフォーマンスを見せた色気のあるチルナンバー「ランタナ」、センチメンタルかつロマンチックな空間を作り出した「遠い国」、心の奥で燃える強い意志を歌にした「新緑」と、『新緑』収録曲を立て続けに披露すると、彼は同作が生まれるまでの背景を語り出した。今までで最も時間を掛け、自分の心のままに制作できることがとても楽しく、筆が止まらなかったそうだ。「音楽を始めた頃の気持ちを思い出す、原点に立ち返るような制作だった」と振り返りながらも、音楽を始めた当初は自身の憤りや怒りを曲にすることが多かったと話す。「今は曲を作るときに“この人にこんな言葉を届けたい”と思ったり、誰かの顔が浮かんできたり、優しさを届けたいと思うようになったと気づいた」と、ファンを含め自分を支えてくれる人々に感謝を告げ、『新緑』を末永く楽しんでほしいという思いを丁寧に伝えると、自身を奮い立たせる「ざわめき」を一言一言噛みしめるように歌った。
その後は「おぼせ」を弾き語りで、「て」をキーボードとの2人編成で届けアコースティックならではの臨場感ある歌と演奏で観客を引き込むと、「ラブソング」ではギターを置いてピアノの音色に乗せて命を愛でるように喉を震わせる。強い願いが込められた彼の歌声に、観客もそっと身を委ねた。
今回のツアーを振り返った上野は、過去最高本数のツアーを経て「ひと回りもふた回りも大きくなれた」と晴れやかな表情を浮かべる。「波に木」などでその誠実な気持ちを伝えると、本編ラストは「予感」。力強い清涼感でもって、未来を明るく照らすように歌う。そんな彼に導かれ観客のクラップの熱量もより増し、会場は新しい季節を迎えるようなエネルギーに溢れた。
アンコールで単身ステージに登場した彼は、「次にやる曲は一緒に歌ってほしい」「スマホのライトで照らして、みんなにすごく綺麗な星を作ってほしい」と呼び掛けると、「合い着」のサビの歌唱を観客に委ねる。彼のギターに乗せて少し照れながら歌う観客たちの声は〈本当のことを言えば君が好き/嘘をついていいなら君が嫌い〉という歌詞に新しい輝きを宿していた。
バンドメンバーを呼び込むと「またこういう日が作れるようにひとつずつ、みんなが誇れるアーティストになって、みんなの心がもっと優しくなれるように、僕も優しく生きていこうと思います」と笑顔を浮かべると、ツアーの締めくくりに選んだのは、ファンへの思いをしたためた「リジー」。曲の終盤で「終わりたくない!」と笑いながら素直な気持ちを吐露すると、再度観客にシンガロングを求めた。ホールの響きとクラップで観客の歌声はクワイアのように華やぎ、それに触発されてか上野のボーカルもより情感豊かに色づく。会場全員でピュアかつエモーショナルなエンドロールを作り上げた。
聴き手と向き合うなかで、自分自身の過去や現在の心境とも丁寧に向き合った上野大樹。自身の27歳の誕生日となる9月21日には、東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで弾き語りの単独公演が決定している。『新緑』の制作、同作のリリースツアーを経て様々な変化を迎えた彼は、年齢を重ねるタイミングでまた新しいフェーズへと歩み出していくだろう。そんな期待に胸が躍る、隅々まで澄み渡った健やかなツアーファイナルだった。
Text:沖さやこ
Photo:Kasumi Osada
◎公演情報
【新緑 -shinryoku-】
2023年8月26日(土) 東京・I’M A SHOW
<バンドメンバー>
Akira Murata(Key. / Cho.)
Makoto Ideue(Gt. / Cho.)
Keitaro Kanamine(Ba. / Cho.)
Akihiro Mitsuboshi(Dr.)
<セットリスト>
1. 夏風を待って
2. 航る
3. 朝が来る
4. 海街ち
5. ランタナ
6. 遠い国
7. 新緑
8. ざわめき
9. おぼせ
10. て
11. ラブソング
12. 波に木
13. アカネ
14. 素顔
15. 線に沿って
16. 予感
En1. 合い着
En2. リジー
▼プレイリスト
https://avex.lnk.to/Shinryoku_tour
https://www.youtube.com/watch?v=sRPQ6nucpaw&t=236s
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