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【2.5次元】ライブ・ビューイングが作り出す新たなマーケット「観客が『どう見るか』を決め、選ぶ」時代に ライブ・ビューイング・ジャパン・小谷浩樹代表取締役インタビュー

 ジャパン・カルチャーの一つとして、年間223万人の観客動員を記録する「2.5次元ミュージカル」(以下、2.5D)。その上演作品数や動員数の伸びに比例するかのように、ライブ・ビューイングでの上映数も右肩上がりに増えている。そもそも、ライブ・ビューイングとは、音楽ライブや演劇公演、スポーツ大会などを全国に配信、映画館などのサテライト会場で鑑賞するというもの。今や、2.5Dの数多くのタイトルで、ライブ・ビューイングが行われている。今回は、2.5Dにおけるライブ・ビューイングというマーケットについて、株式会社ライブ・ビューイング・ジャパンの小谷浩樹代表取締役に話を聞いた。

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs四天宝寺 (C)許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト (C)許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

-日本ではライブ・ビューイングはいつ頃からスタートしたのでしょうか。

 映画館のデジタル化が進み出したことに合わせてスタートしたもので、日本では、2004〜05年のゲキ×シネ(劇団☆新感線の公演映像を映画館で鑑賞できる企画)やシネマ歌舞伎(歌舞伎の公演を映画館で鑑賞できる企画)が最初でした。その後、06年にメトロポリタンオペラの中継が初めて行われ、宝塚歌劇団の公演やL’Arc~en~Cielのパリ公演の中継があって徐々に増えていったと感じています。

 そもそもライブ・ビューイングは、映画館のデジタル化に伴って広がったマーケットです。それ以前は、フィルムで撮影した作品しか上映できませんでしたが、デジタルプロジェクターやサーバーが普及したこと、SDからHDのハイビジョンに変わったことで、いわゆるビデオで撮影した映像が上映できるようになりました。それが、ライブ・ビューイングがスタートしたきっかけでもあります。また、コンテンツを制作する側も、自分たちのコンテンツを広く見せるための新たな方法を模索していましたし、一方でデジタル化を推し進める、デジタルプロジェクターの関連会社なども、機材が高額であることから、映画以外の収入を得るために、ほかのコンテンツを映画館で上映することを考えていました。さまざまなビジネスがうまく合致してマーケットが広がっていったのだと思います。

-現在、配信されているコンテンツは中継と収録ではどちらが多いのですか。

  圧倒的に生中継です。舞台の場合は、千秋楽の中継が多いです。

-音楽、舞台、映画やイベントなどさまざまなジャンルを配信されていますが、それぞれのジャンルはどれぐらいの割合で配信されているのですか。

 音楽が最も多く、全体の7~8割程度。2.5Dや宝塚などを含め、舞台関連が1割強、それ以外がスポーツやお笑い、声優さんのイベントなどさまざまなコンテンツになります。

-2.5Dはいつ頃から配信をスタートしたのですか。

 2009年のミュージカル『テニスの王子様』(以下、テニミュ)が中継を行ったのが最初だと思います。テニミュが中継を続けたことで2.5Dファンの方にも認知されるようになりました。

-2.5Dのライブ・ビューイングが増えた理由は、どういったことだとお考えですか。

 2.5Dの作品自体が増えたから、自動的にライブ・ビューイングが増えたと認識しています。作品が増えたことで、同時に小屋(会場)問題も出てきますし、地方では公演ができない作品も増えてくる。そうすると、必然的に地方の方や、多くの方に見ていただくためにライブ・ビューイングを活用しようと、お考えいただけるのだと思います。

-公演を収録したDVDやブルーレイとお客さんがバッティングすることはないのでしょうか。

 ないと考えています。DVDやブルーレイは、公演を見た記念に買うという方が非常に多いんです。ですから、「見た」という経験をした方を増やすために、より広く見せることでパッケージの売り上げも伸びます。また、例えば、ネットでの配信というような、形態が似たサービスとも、ほぼ食い合うことはありません。お客さまが、それぞれの作品を「どう見るか」を決め、それに合わせてネット配信やライブ・ビューイングを選ぶので、お客さまがかぶらないんです。

-なるほど。では、ライブビューイングという観点から見て、2.5Dの魅力は?

 もともと、漫画やアニメ、ゲームとして2次元の世界で楽しめるものが原作となっているので、映像で見る違和感が少ない気がします。そのため、映像化にマッチしているという印象があります。また、本公演の会場が大きかったり、後方の席での観劇となると演者の表情まで見ることができませんが、ライブ・ビューイングでは表情や目線まで見ることができる。もちろん、本公演には同じ場所にいられるという喜びもありますが、表情をじっくり見るにはライブ・ビューイングが適していると思います。

-映画館で行われるということは、例えば飲み物を飲んだり、何かを食べながら見ることができるということですか。

 はい。基本的なルールやマナーは映画を見る際と同じです。舞台の本公演は、通常、飲食も禁止で、音を立てずに観劇するものですから、本公演はハードルが高いと感じていらっしゃる方にもライブ・ビューイングは向いていると思います。ある意味、非常に気楽に見ていただけると思います。また、チケット代も本公演に比べて安価なため、友人を誘いやすいというのも一つのメリットです。2.5Dに興味を持っているけれども、なかなか本公演には誘いにくいという場合に、ライブ・ビューイングはちょうどいい。本公演にはない気楽さがありながらも、映画館にわざわざ行くということで非現実感も味わえます。それから、2.5Dは特に女性のお客さまが多いため、地方に住んでいて子どもがいるので、遠征はできないけれど近隣の映画館には行けるという方や、お子さんと一緒に見たいという方にも喜ばれています。

-今後は、どのような展開をお考えですか?

 上映タイトル、上映館を増やしていきたいとは思っておりますが、2.5Dの公演自体が増えたために日程もかぶることも多いので、生中継以外の形も考えていかなければならないと思っています。また、同時に、夏休みや年末年始など大作映画が多い時期には、コンサートも増えるため、映画館が混み合うという問題もあります。そういった意味でも、見せる場所も今後、考えていかなければならない。例えば、コンサートならばライブハウスに配信してみたり、舞台ならば公共ホールに配信してみたりと、さまざまな方法を考え、トライアルを重ねてベストを探りたいと思っています。

 

©TYPE-MOON / FGO STAGE PROJECT

『Fate/Grand Order THE STAGE−神聖円卓領域キャメロット−』のライブ・ビューイングは、1月26日17時に女性マスターVer.、1月27日12時に男性マスターVer.を開催。

https://liveviewing.jp/contents/fate-go/

©許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト
©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン青学(せいがく)vs四天宝寺 大千秋楽ライブ・ビューイングは、2月17日17時30に開催。

https://liveviewing.jp/contents/tennimu3rd-shitenhoji/

 

株式会社ライブ・ビューイング・ジャパン 代表取締役 小谷浩樹氏