山下リオ「それぞれの愛の形を、まざまざと見せつけられるような映画になっていると思います」『遺愛』【インタビュー】

2026年6月30日 / 08:00

-「愛か呪いか」が、この映画のキャッチコピーになっていますが、それについて、演じながらどのように感じましたか。

 本当にその通りだと思います。愛とか呪いとか、一応名前は付いていますけど、それって、立体造形にしたら同じものができる可能性があると。演じながらも、自分では愛だと信じているものが、誰かにとっては呪いになっているかもしれない。そんな人間の多面性を常に意識していました。この映画に登場する“何か”もそうですが、ある人には見えて、ある人には見えないものがあります。だからこそ、この作品を見た人が抱く感情も本当にさまざまだと思います。監督がおっしゃっていたように、ヒーロー映画として受け取り、爽快感を覚える方もいるかもしれません。一方で、純粋なホラーとして恐怖を感じる方もいるでしょう。そういう意味では、この作品は単純にホラーというジャンルには収まらない作品だと感じています。愛と呪い、生と死、正義と狂気といった境界線が曖昧なまま存在していて、その曖昧さの中でお芝居をしていました。

-では、山下さんにとってのホラー映画とは。

 エンターテインメントとして、 好きなジャンルです。私自身、不思議な体験や怖い体験をすることが多かったので、ホラー作品の中で描かれるファンタジーや超常的な出来事も、どこか現実と地続きのものとして受け取れるんです。特に日本のホラーは、ただ驚かせるためだけではなく、人間の感情や心理に深く入り込んでくる作品が多い印象があります。恐怖だけでなく、切なさや悲しみ、愛情のような感情まで呼び起こされるので、とても魅力的だと感じています。

 私にとってホラー映画は、ジェットコースターに乗りに行くような感覚に近いかもしれません。日常生活の中で、本気で驚いたり、恐怖で思わず声が出たりする機会はなかなかないですが、ホラー映画には、それを安全な場所で体験できる面白さがあります。それに、みんなが自ら恐怖を求めて映画館に集まるという現象自体も、とても興味深いですよね。怖いと分かっているのに見たくなる。その人間の不思議さも含めて、ホラー映画の魅力だと思います。

-完成作を見た印象はいかがでしたか。

 完成した作品を見た時は、これまでに味わったことのない種類の恐怖だと感じました。言葉にするのがとても難しいのですが、 真っ暗な場所で何も見えないまま、 自分の奥底にある何かをつかまれるような、得体の知れない怖さがあるんです。だからこそ、この映画に対して抱く感情は、人によって大きく異なるのではないかと思います。恐怖を強く感じる方もいれば、私のように不思議な爽快感を覚える方もいるかもしれません。その感覚は自分自身にとっても新鮮でした。

 この作品は、ホラーでありながら家族の愛を描いた物語でもありますし、一つのジャンルだけでは語りきれない魅力があります。だからこそ、 「これはこういう映画です」と一言で説明するのが難しいんです。また、劇中で描かれる出来事は非現実的でありながら、登場人物たちの感情や芝居は徹底してリアルです。そのリアルさがあるからこそ、現実と虚構の境界が曖昧になり、見る人の心に深く入り込んでくるのだと思います。その言葉では説明しきれない感覚が重なり合っているところが、この作品ならではの見どころだと感じています。

-これから映画を見る観客や読者の方たちに向けて、一言お願いします。

 本当に最初から最後までずっと不穏なんです(笑)。気味が悪いし、落ち着かないし、「何なんだろう、これ」と思う瞬間もたくさんあると思います。 でも、 その違和感って意外と遠い世界の話ではなくて、自分たちの日常のすぐ隣にあるものなんじゃないかとも感じています。私自身、完成した作品を見ても「これはこういう映画です」と一言で説明することができませんでした。だからこそ、ぜひ見ていただいて、それぞれの答えを見つけてもらえたらと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2026「遺愛」製作委員会

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