青山貴洋監督「問診シーンが最大の課題に」日曜劇場『19番目のカルテ』【インタビュー】

2025年8月25日 / 11:44

(C)TBSスパークル/TBS(撮影:加藤春日)

 また、原作から得た気付きも大きいという。「原作には、読者の感情を揺さぶる瞬間が描かれています。それがどこにあるのかを探りながら、ドラマにもそのエッセンスを取り入れるようにしています」。

 原作の短編では、百々がさまざまな医療機関を受診しても診断がつかず、やがて総合診療医のもとで線維筋痛症と判明した時に「これでやっと…自分は病気だって言える」と語る場面が描かれている。

 「診断がつくことが救いになる。そんな感覚は新鮮な発見でした。原作にはそういった気付きがいろいろなところに隠されているのでそれを大切にしています」。

 主演の松本について、青山監督は「役者としての資質に加えて、作り手の視点も持ち合わせている」と語り、その表現力と洞察力に信頼を寄せている。「徳重先生のように、ミクロとマクロの視点を切り替えて全体を俯瞰(ふかん)する力を自然と備えているように感じました」。

 特に印象的だったのは、徳重の“まなざし”をめぐる演出だ。問診中、徳重は患者の目をじっと見つめ続ける。「普通の人間は、会話の中で目線を外したりしますよね。でも徳重は違う。松本さんには『目線を外さず、全ての話を聞いてから話し出す』ということを最初にお願いしました」。

 眼鏡の反射や角度にも細心の注意を払いながら、「最も優しく見える角度」を探し、繊細な表情づくりに取り組んだ。「今まで見たことがないような穏やかな目つき」と評するその表情は、徳重の静かな信念と優しさを映し出している。

 一方で、徳重と共に総合診療科を支える新米医師・滝野みずきを演じる小芝風花について、青山監督は「すごく健康的で、たおやかな方」と語る。

 「その自然なたたずまいが嫌味を感じさせず、涙を流す場面でも押しつけがましくならない。純粋で自然な感情が伝わってくる方です」。また、「周囲を幸せな気持ちにさせる雰囲気を持っていて、滝野役にとてもハマっている」と評価する。

 加えて、滝野について「このドラマの中で成長していく立場を担っている」とした上で、「徳重は確固たる診療哲学を持った人物。一方で滝野は、経験を積みながら変化し成長していく存在です。小芝さんはその関係性をよく理解し、丁寧に演じてくれている」と語った。

 徳重と滝野の関係には、裏テーマも仕込まれている。「徳重が若い頃に持っていたであろう未熟さを、滝野に重ねて見ているようなイメージがあるんです。第1話で、滝野が患者の横吹順一(六平直政)の言葉に眉をひそめる場面を見かけた徳重が、若かりし頃の自分を重ねて懐かしく感じているような…。徳重は総合診療医として成熟していますが、滝野にしかできない診療の方法もある。今後2人は異なる形で信頼関係を築いていくと思います」。

 さらに今後、徳重の恩師で、現在は離島で医師として活動している赤池登(田中泯)も加わった構図が描かれていく。「赤池先生は祖父、徳重は父親、滝野は孫のような存在。それぞれが異なる診療哲学を持ちながらも、総合診療医としてつながっていく姿を描いていきたい」と青山監督は展望を語った。

 「せりふにも出てきますが、『孫には言いやすい』という表現がまさに象徴的です。親子だからこそ言えないことも、孫には素直に伝えられる。そんな3人の関係性が今後の見どころの1つになると思います」。


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