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南果歩「恐れずにチャレンジできた1年」を経て挑む出演舞台【インタビュー】

 数々のドラマや映画、舞台で活躍を続ける南果歩が出演する舞台、tsp NextStage制作「これだけはわかってる~Things I know to be true~」が6月30日から上演される。ある家族のとある1年を描いた本作で、南が演じるのは母親のフラン。家族同士のコミュニケーションの難しさや、互いに成長していく家族の様子を丁寧につづる本作で、南は母親をどう演じるのか。本作への意気込みや役作りについて聞いた。

南果歩 (C)エンタメOVO

-出演が発表されたときに「素晴らしい戯曲に出会いました」というコメントを出していましたが、本作のどんなところに魅力を感じましたか。

 家族の群像劇の中に、今日的なテーマがたくさん入っていて、家族一人一人の人生を描いています。「家族」は普遍的なテーマなので、これまでにもさまざまな作品はありますが、この戯曲の構成はテネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』に近いものがあり、とても興味が湧きました。私は20代でローラ役をやっています。今回は母親役なので、時の流れも感じています。

-南さんが演じるフランという人物については、どのように捉えていますか。

 仕事に4人の子育てにと毎日忙しく飛び回っていて、子どもたちの心配も人一倍する母親という一面がありながらも、人生の中では誰にも話していない時間と思いを心の奥底に持っている女性です。岐路に立ったときは一人で思い悩み、決断をくだし、それを乗り越えた先で、再び家族との時間を積み重ねています。戯曲を通してフランの人生を、一人の女性のさまざまな顔を演じてみたいと思いました。

-(取材当時)すでに稽古がスタートしていると聞いていますが、実際にフランを演じてみてどんなことを感じていますか。

 シリアスなモーメントもありますが、笑える箇所もたくさんあるので、会話の面白さや笑えるところを膨らませていきたいなと思います。まだ立稽古が始まったばかりで、あまり余裕がないんですよ(笑)。ただ、みんなで頑張ろうという団結力のある稽古場なので、これからみんなで作り上げていければと思います。

-共演者の印象を聞かせてください。これまで共演経験のある人はいますか。

 山下リオさんとは、「定年女子」というドラマで親子役を演じたことがあります。今回も親子役、しかも母親と一番近しく反発もある長女役を演じるので、心強いです。

-フランの夫であり、家族の父親役は栗原英雄さんが演じます。栗原さんとのお芝居はどう感じていますか。

 初共演ですが、すごく頼りがいのある俳優さんだと思っています。(栗原が演じる父親の)ボブとは30年以上共に過ごしてきた歴史があるので、それを一緒に作っていけるのではないかなと思っています。市川知宏さん、入江甚儀さん、山口まゆさんとも、母親としての関わり方が違ってくると思うので、どんな親子関係を表現できるか楽しみです。

-本作を通して観客にどんなメッセージを伝えたいですか。

 観客の皆さんが“子ども”という役割を担っていても、“親”という役割を持っていても、それぞれの立場で感情移入できる作品だと思います。日常は容赦なく毎日やってきて、それを何とかこなしていかなくてはいけませんが、劇中で生きているこの家族の日常と、観客の皆さんの時間や思いが、きっとシンクロするところがあると思います。何があっても日々は容赦なく続いていくことを描いているのがこの作品の面白さだと思うので、老若男女を問わずたくさんの方に楽しんでいただけるお芝居ではないかなと思います。

-本作は、家族の関係を描いた物語ですが、南さん自身は親しい人とコミュニケーションを取るときに、どんなことを大切にしていますか。

 自分が言われて嫌なことは言わないということです。特に私は、言葉にとても敏感なので、誰かに一言を投げかけられて、その言葉が人生の指針になったりもします。なので、自分が発する言葉は私自身だと思っています。自分の言葉以外を話すことが芝居の面白さでもありますね。

-劇中で描かれているように、もし、家族と意見がぶつかってしまったらどう対処しますか。

 ぶつかっていいと思っています。全てに共鳴、共感する必要はないと思うので。違いを認めることが大事だと思いますし、私は自分とは違う視点を持っている人の意見を聞くのが好きなので、いろんな人の意見に耳を傾けて、刺激をもらいたいと思うタイプです。

-では、家族の1年の成長を描いている本作にちなんで、南さんにもこの1年を振り返ってもらいたいと思います。どんな1年でしたか。

 すごく成長したと思います。自分の思い通りにならないことがあっても、それにあらがわずにできることをやったと思えますし、新しい発想がどんどん生まれて、それを実現できた1年でもありました。書き下ろしのエッセーや初めての絵本も出版しました。舞台も2本やりましたし、海外への挑戦も続けています。実は私は小心者なのですが、恐れずに新しいチャレンジができた1年でもあったと思います。

-新しいことに挑戦しようと思ったきっかけがあったのですか。

 きっかけがあったわけではないですが、常に新しいものを求めて、自分に刺激を与えてくれるものを探しているのだと思います。ただ、新しい挑戦をするためには、タイミングや巡り合わせも必要です。自分が望んでいてもやってこないこともあるので、タイミングがやってきたときには逃さないことが大事なのかなと思います。

-南さんは映像作品でも活躍していますが、舞台で演じることの面白さはどんなところに感じていますか。

 舞台と映像では、同じお芝居でも競技が違うと思います。映像はジグソーパズルを1ピースずつ埋めていくような作業。対して舞台は、毎日、積み木を組み立てて建物を作り、公演が終わったら崩して、次の日にまた改めてトライするということです。舞台では、毎日始まりがあって終わりがあるので、その日にもしうまくいかなくても、次の日にまた新しく始められるという良さもあります。まったく成り立ちが違うので、それぞれに面白さがあると思います。

-改めて公演への意気込みと読者にメッセージをお願いします。

 家族の物語なので、男女を問わず、どの世代の方にも楽しんでいただける作品です。きっとこの作品は、見た後に自分の人生に立ち戻る瞬間があると思います。これは劇場でしか体験できないことだと思うので、ぜひ劇場で楽しんでいただけたらと思っています。

(取材・文・写真/嶋田真己)

「これだけはわかってる~Things I know to be true~」

 tsp NextStage「これだけはわかってる~Things I know to be true~」は、6月30日~7月9日に、都内・東京芸術劇場シアターウエストで上演。

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