エンターテインメント・ウェブマガジン
1996年に韓国で初演され、約20年間のロングランを記録した国民的大ヒット舞台「私に会いに来て」が、主演・藤田玲をはじめとする日本キャストによって上演される。韓国映画『殺人の追憶』の原作にもなった、人生を懸けて闘い続ける刑事たちの人間模様を描く究極のラブサスペンスドラマが新たに生まれ変わる。今回は映画の大ファンでもあり、本作で容疑者を演じるSUPERNOVAのグァンスに、作品への並々ならぬ思いや、役作り、演出を手掛けるヨリコ ジュンとの関係などを聞いた。
個人的に大好きだった作品なので、これを日本でやれるんだと。うれしかったし、びっくりしました。自分が大好きな作品のリメーク作品に出演するなんてなかなかできないことだと思うし、すごく光栄でもあります。原作の役を演じたキャストの方とはかぶらない、自分にしかできない役作りをして、その役を演じたいと思っています。
映画の中で監督やキャストの皆さんが観客に伝えたいメッセージ、その答えが1回見ただけでは僕には分からなくて、ずっと見ていたんです。映画の最後のシーンで主役の俳優さんが、いきなりカメラ目線になるんです。モチーフになった実際の事件が未解決事件だったし、あまりにも映画が成功したので、もしかしたら、犯人も映画を見ているかもしれない。その犯人に対して、「おまえは見ているだろう」と言っているんじゃないかと個人的に思いました。
ビジュアル撮影はしました。あと、韓国の舞台に出演した俳優さんと会って、いろいろなアドバイスを聞きました。1人で3人の容疑者役を演じるのですが、キャラクターが劇的に違うので、その違いをどうやって見せればいいのか。それと、一番大事なのは本当に犯人なのかそうじゃないのかという微妙なところ。その微妙な違いをどうやって出したらいいか。自分も実際に演じるときにすごく難しかったし、何回も悩んで悩んで本番中も悩みながら作品に参加したと言ってくれて、そこをバッチリ演じて、観客の皆さんに伝わったらそれでいいんじゃないかと話をしてくれました。自分も千秋楽まで同じようなことになるんじゃないかと思います。
多分ヨリコさんは僕よりもこの映画を見ていらっしゃると思う。その舞台に出演したときに、この作品の話をして、僕に負けないぐらい映画のファンだなと思いました。ビジュアル撮影のときも2人で盛り上がって話をして、僕もヨリコさんも愛情があるからいい作品が出来上がるんじゃないかなと思う。
もし本作を日本でやれるならぜひやりたいです、この映画が大好きですというアピールはしました(笑)。もちろん舞台化が決まる前でしたが。
前回ご一緒した舞台では、完成版の台本が出てきたのは稽古が始まる2週間前。僕は台本を読み込んで自然と覚えていくタイプなので、覚えるのがすごく遅いんです。僕にとっては、当時2週間では足りなくて、稽古が始まるまでに台本を覚えていなかった。初稽古だし、気楽に考えていたら、ほかの演者の皆さんは初日からせりふを全部覚えていて。僕以外はみんな台本を持たずに稽古に臨んでいて、それを見るやいなや、プレッシャーがかかったのを覚えています。
その日の稽古が終わったときにヨリコさんがみんなにコメントしてくれたんですけど、僕に対しては「台本覚えてください」の一言だけだった。だから家に帰って必死に覚えました。1回経験したから、今回は初めての稽古からちゃんと覚えていこうと思っています。あの冷たい顔で「台本覚えてください」とはもう二度と言われたくない(苦笑)。
すごく頑張ったとか、自分のお芝居がよかったからヨリコさんに気に入られたとか、そういうことは分からないです。でも、初めて通しで稽古をやった帰りにいきなり「グァンス、なんか役つかんだ?」って言われて。どういうことか聞いたら「何か今日見ていたら違う。すごくよくなっているよ。今の通りでいい」と言ってくれたんです。それまで1カ月、一度も褒めてもらったことがなかったのに(笑)。ヨリコさんの言葉がすごくうれしくて、もっと頑張れるきっかけになりました。
もちろんです。メンバーはみんなこの作品を知っています。映画も何回も見ていると思います。僕はいつも何か仕事が決まったときに、それほどうれしそうに「決まったよ」とは言わないんですけど、今回は、すぐにメンバーのグループチャットで言いました(笑)。みんなびっくりしていて、とくにゴニルが「すごくうらやましい」と言っていました。逆に何か仕事が決まったとき、メンバーは応援はしてくれても、うらやましいとかは言わないんですけど、心の奥から「うらやましい」が出ていた(笑)。
韓国でお芝居をやっている者からすると、この作品は特別です。韓国人にとっても特別な作品だと思います。この映画が公開された頃は韓国映画が一番発展している時期だったし、ものすごくいい映画が出ていた。この映画はそのスタート地点の作品です。とてもいい原作の作品を、改めて日本で表現するにあたって、新しい世界観も入ってくると思うし、キャストの皆さんと一つになって準備して、観客の皆さんにいい作品を見せるために頑張ります。
(取材・文・写真/小林裕美)
舞台「私に会いに来て」は9月13日~16日、都内・新国立劇場 小劇場、9月19日、20日、大阪・サンケイホールブリーゼで上演。
公式サイト https://www.watashiniainikite.com
舞台・ミュージカル2025年12月10日
元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む
ドラマ2025年12月8日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む
映画2025年12月5日
戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年12月4日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む
ドラマ2025年12月1日
WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。 主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む