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【インタビュー】「逃亡料理人ワタナベ」池内博之、「世界で活躍したい」追い続けるモデル時代からの夢…

 日中合作のグルメコメディードラマ「逃亡料理人ワタナベ」に主演する池内博之。近年は邦画にとどまらず、中国映画にも名を連ねるようになり、活躍の舞台が日本からアジアへと広がったが、彼が目指している場所はどこなのだろうか…?久しぶりのコメディー作品に臨んだ喜びの声とともに聞いた。

池内博之(ヘアメイク:上地可紗/ARISA UEJI、スタイリスト:荒木大輔/DAISUKE ARAKI)

 台湾一有名なモデルと称されるリン・チーリンとダブル主演した日中合作映画『スイートハート・チョコレート』(13)を皮切りに、ジャッキー・チェン主演の中国映画『レイルロード・タイガー』(16)、名匠ジョン・ウーが手がけた香港・中国合作映画『マンハント』(17)などにも出演している池内。中国マーケットに目を向ける芸能人も多いことから、彼もアジア進出を狙っているのかと思いきや、見すえる場所は世界だ。

 21歳でテレビドラマ「告白」(97)で俳優デビューする以前にモデル活動をしていた池内は、香港在住の友人を頼って海を渡り、それをきっかけに世界に飛び立つことを望んだそうで、「パリコレとかニューヨークの有名なショーなどに出て、世界で活躍したい思いが強かった」と回顧する。

 しかし、厳しいファッション業界でその夢はかなわなかった。だからこそ、「役者を始めた頃から、いつか海外でも通用する役者になりたいと思い続けていました」と吐露。現在、数々の海外作品のオーディションに参加しており、「アジア作品が多いのはたまたまで、特にこだわっているわけではないです。ハリウッドにも行きたいです」と目を輝かせる。

 すでにその足場は作り出したように感じるが、「全然…。やっぱり語学力は必要ですよね。以前、撮影のために中国語を勉強しましたが、日常会話程度しか話せないし、英語も完璧ではないです」と言葉の壁にぶち当たっていることを告白。

 とはいえ、確実に成長はしており、ある映画の撮影で中国語を勉強していることを知った監督から、本来はなかった中国語のせりふを与えられたことを明かし、「言葉の意味を理解して、感情も乗せなければいけないから外国語のせりふは難しいけど、そのときはやれたな!と手応えを感じました」と充実した表情を見せた。

 さらに、「挫折することもあるけど、そういうのが次の作品に向かうバネになるし、必ずどこかで誰かが見てくれていると信じて、役の大きさに関係なく、一つ一つの作品に取り組んでいます」と昔から変わらない信念と、「海外作品に挑戦することも含めて、年齢を重ねることで攻めの姿勢に傾いているかもしれません」と自身の中での変化を語った。

 そして、世界レベルの俳優や監督とタッグを組み、刺激をもらいながら芝居に没頭した日々を振り返り、「不安になることもあるけど、いいパフォーマンスをして、監督やファンの方が喜んでくれると、やってよかったなとうれしくなります」と笑みもこぼした。

 そんな池内が主演する本作は、妻殺しの容疑をかけられた天才料理人・亘鍋(池内)が、グルメ好きの刑事・出口(岸谷五朗)に追われて日本各地を逃げ回る中、おいしい食材と人生に迷う人々と出会い、つい料理人の腕を発揮してしまうというコメディードラマ。

 昨年、求人検索サイト「Indeed」の「ONE PIECE」コラボCMでゾロ役の完璧なコスプレ姿を披露して視聴者を楽しませてくれた池内は、「島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭」で上映された『ヤウンペを探せ!』でも、大好きなヒロインのために暴走する駄目な中年おやじを演じるなど、コメディー作品が続いている。

 シリアスなキャラクターを演じることの多い池内にとっては珍しい傾向だが、実は当の本人が「ずっとコメディーをやりたい」と考えており、「最近は重たい話や悪い役が多かったので、もっとライトで弾けた役をやりたいと思っていました。固定しつつあった役のイメージも払拭(ふっしょく)したかった」と打ち明ける。

 その待望のドラマの現場を、「コメディーはさじ加減が難しいし、撮影中はモニターチェックもなかったので、大丈夫かな?と思いながらも監督に身を委ねていました」と思い返す。

 一方で、亘鍋が原始人に扮(ふん)して牧場をはいずり回ったり、巨大なカニと温泉に入り、浸かっている温泉水を「出汁(だし)だぁ!」とおいしそうにゴクゴク飲んだりする妄想シーンは、「楽しくてテンションが上がりました」と大喜びする。これまでの役の印象からクールな性格のように感じていたが、池内を知る人たちが本作を見ると、「相変わらずだな」と笑うほど、素はおばかなことも大好きな人間なのだとか。

 料理人役も松本潤主演の連続ドラマ「バンビ~ノ!」(07)でゲスト出演した際に経験はあるが、ほぼ初めてだそうで、「握った拳の指の間から均等に塩を振る作業や、かつらむきや千切りなどの調理シーンはやはり難しかったです」と渋い顔を浮かべた。だが、「演じたこと全てが役者としての糧になりますからね」と常に気持ちは前向きだ。

 現在42歳。芸歴も20年を越えてベテランの域に達しながらも「まだまだですね」と全力で走り続ける池内。挫折さえも踏み台にする気概を持っているのだから、いつかその跳躍で世界の壁を越えるのだろう。

(取材・文・写真/錦怜那)

 ドラマ「逃亡料理人ワタナベ」はひかりTVで独占先行配信中。

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