【インタビュー】海外ドラマデビューの小澤征悦 キャリア成功のカギは“棚からぼた餅”と“人の縁”

2017年2月24日 / 17:30
「クリミナル・マインド 国際捜査班」 WOWOWプライム 毎週火曜午後11時から(二カ国語版)、毎週水曜深夜0時から(字幕版)

「クリミナル・マインド 国際捜査班」 WOWOWプライム 毎週火曜午後11時から(二カ国語版)、毎週水曜深夜0時から(字幕版)

 昨年、オーディションでメーンキャスト役を勝ち取り、ホラー映画『JUKAI-樹海-』でハリウッド映画デビューを果たした俳優の小澤征悦が、今度は大人気犯罪捜査ドラマシリーズ「クリミナル・マインド FBI行動分析課」のスピンオフドラマ「クリミナル・マインド 国際捜査班」で海外ドラマデビューする。渡辺謙、真田広之らと同じ国際派俳優としての道を歩き始めた小澤が、その道程と胸中、そしてドラマ撮影秘話を語った。

 海外で事件に巻き込まれた米国人を救出するために世界中を飛び回るFBI国際捜査班(IRT)の活躍を描いたこのドラマ。小澤は第4話のゲストとして、米国人の連続自殺事件の捜査で来日したIRTメンバーをサポートする日本人刑事のリョウ・ミランテ役を演じる。

──まずは出演に至った経緯を教えてください。

 ナレーションを担当した映画『ディズニーネイチャー/クマの親子の物語』(2015年公開)のプロデューサーさんから「海外ドラマのプロデューサーが日本人の役者を探しているから紹介したい」と言われ、その方とロスでお会いした時に「ぜひ出てくれ」とオファーをもらいました。実は『JUKAI-樹海-』のプロデューサーさんも、その方を「今度紹介したい」と言ってくれていたんです。

──偶然ですね。しかもいきなり舞い込んだオファーがビッグネームの作品とは。

 名前はもちろん知っていましたし、こんなドラマに参加できるなんて、人の縁って大事ですね(笑)。

──初となる海外ドラマの撮影現場はいかがでしたか。

 役者を19年間やっていますが、海外で、しかも英語で仕事をするということで初日はものすごく緊張しました。でも、僕が日本でやってきたことと基本的に同じだったので徐々に安心感を得ました。

左から2人目がゲーリー・シニーズ

左から2人目がゲーリー・シニーズ、中央がダニエル・ヘニー

──主演のゲーリー・シニーズ(IRTチーフ/ジャック・ギャレット役)はどんな方でしたか。

 会った時は『フォレスト・ガンプ』だ!と感動しました(1995年公開映画/ダン・テイラー中佐役で出演)。スクリーンでしか会えない“銀幕の人”が目の前にいるという感じ。でも実際に話すとフランクで優しいし、「わたしはスターだ!」という匂いがまったくしないので、器の大きさを感じました。現場でも劇中同様にゲイリーがみんなをまとめていました。

──一番共演シーンが多いダニエル・ヘニー(IRT捜査官/マシュー・シモンズ役)の印象は?

 ダニエルとは人間の芯の部分が似ている感じがして好きです。(韓国系アメリカ人なので)韓国の文化で一番素晴らしい“先輩を立てる”ことがすごくて、2~3歳上の僕をアニキと慕って食事や飲みに連れて行ってくれました。あっ、全然知らなかったんですけど、ダニエルは日本ですごい人気なんでしょ? …友だちです!(笑)

──小澤さんとダニエルとの絆は画面から伝わってきました。

 男の友情が生まれたのは確かです。2週間ちょっとの撮影でしたが、相手を深く知れば芝居にも影響が出てきます。だから、ラストの別れのシーンでの互いの拳をぶつけるアクションは脚本にありませんでしたが、2人で話し合い、捜査を通して国や人種の垣根を超えた2人を表現する上でも役立つということで監督にOKをもらって取り入れました。

──劇中の「自殺は日本の文化」というせりふが衝撃的でした。文化やイメージが誤って発信される恐れがあると感じましたが…。

 そこは思うところはありました…。ただ、一役者として意見する立場にいないので、与えられた中で自分ができる最大限の努力をして作品を成立させるのみでした。それに、僕たちも海外について勘違いしていることはたくさんあるから、言葉の端を取って “悪かった探し”をするのは生産的ではないのかな…と思います。

ozawa3_007_R──日本語吹き替え版でもリョウ役を担当されていますが、過去に体験したアフレコとは違いましたか。

 英語と日本語は同じことを言っていても、尺(時間)もスピードも抑揚も違いますよね。特に標準語は日本語の中でもフラットな方だから、抑揚の強い英語とのせめぎ合いでした。それに、日本語だと英語より言葉が短くなる分、間を取る必要があって、それが撮影した時の自分の生理と合わないので大変でした。でも、自分の声に自分の声を当てるというのは初めてで、これまで感じたことのない感覚は面白かったです。

──立て続けに海外作品に携わっていますが、海外進出はいつごろから考えていましたか。

 23歳で役者を始め、30代の初めまではチャンスをもらってやらせていただいている責任もあるし、役者としてベースになる何かを確立するためにも、できることをきちんとやることに精いっぱいでした。でも、21歳でボストン大学に留学したときは英語で芝居について勉強していたこともあり、海外をステージに活躍したいという思いは最初から漠然と心の中にありました。

──現在42歳になられましたが、その心の思いが具現化していったのはいつごろですか。

 34~35歳で自分がやってきたことやこれからのことを考えたときに、インターネットの普及などで世界が狭くなってきた今、挑戦しない手はないと思いました。でも、やり方が分からないから、まずはオーディションを受けました。実は『JUKAI-樹海-』の前に何回もオーディションを受けて、何回も落ちているんです。

──では、この作品への出演は“ラッキー”なだけではないですね。

 「棚からぼた餅」(労せず幸運を得ることのたとえ)は、ただ座っているだけではつかめないんですよ。あれは棚からぼた餅が落ちるというあり得ない状況が起こるかも…とアンテナを張るところから始まるんです。そして次に餅が落ちたときに取りたいと心が動くか、そのために体が動くか…。だから夢をつかむには動かないと無理ですね。

(c)ABC Studios

小澤が出演する第4話は3月7日放送 (c)ABC Studios

──自ら道を切り開いて待望の海外作品に携わったわけですが、それによりキャリア以外に得たものはありますか。

 一歩日本を出ると、誰も自分のことをまったく知らない真っ白の0(ゼロ)の地点に立てると分かったことが、海外に出て最初に得た宝物です。今の僕にとって、役者として0の気持ちに戻れることは大事です。

──役者としての考えや価値観に変化は生まれましたか。

 『JUKAI-樹海-』やこのドラマなど、海外配信を前提にした作品のスタッフやキャストは大きな誇りを持ってやっていることもあり、世界の作り手が見ている先が未来だと感じました。もちろん日本(国内向け)のものが悪いという意味ではないですよ。海外作品を体験したことで日本の良さも再発見できたので、相乗効果を得られたことはありがたいと思います。

──今後はどのような海外作品にチャレンジしたいですか。

 役者はやっぱり出会いがすごく大事ですからね。人、作品、キャラクターの出会いに恵まれれば、超モテモテのエリートやバリバリの殺人鬼、人間の命を助ける崇高なお医者さん、孫をかわいがるすてきなおじいちゃん…。もう、なんでもやりたいです!

 


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