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『プレゼンス 存在』(3月7日公開)
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崩壊寸前の4人家族が、ある大きな屋敷に引っ越してくる。10代の娘クロエ(カリーナ・リャン)は、家の中に自分たち以外の何かが存在しているように感じる。
“それ”は一家が引っ越してくる前からそこにいて、他者には知られたくない家族の秘密を目撃する。母(ルーシー・リュー)や兄に好かれていないクロエに“それ”は親近感を抱く。一家とともに過ごしていくうちに、“それ”は目的を果たすためにある行動に出る。
『トラフィック』(00)や「オーシャンズ」シリーズ、『コンテイジョン』(11)などを手掛けたスティーブン・ソダーバーグ監督が、ある屋敷に引っ越してきた一家に起こる不可解な出来事を、全編を通して幽霊の一人称視点で描いた新感覚のホラー。脚本は「ジュラシック・パーク」シリーズや「ミッション:インポッシブル」シリーズなどのデビッド・コープ。
この小品とも呼ぶべき映画の持つ味わいは、ホラーというよりも心理ミステリーと言った方が近いかもしれない。幽霊の目線に合わせて自分も他人の生活をのぞき見しているような不思議な感覚に襲われるが、やたらと画面を揺らすので酔いそうになるのが難点。
84分でまとめたためか、登場人物の心理面にはあまり深入りせず、人物描写の省略も目立ったが、その分観客の想像に任せるようなところもある。
ただ、クロエをはじめティーンエージャーの薬物使用とそれに伴う弊害の描写が目につくので、幽霊よりもむしろそちらの方が怖いと感じた。また、幽霊目線といえば、白い布をかぶった夫の幽霊がひたすら妻を見つめる『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(17)のことを思い出した。
(田中雄二)