【週末映画コラム】ホラーとコメディーは紙一重『サンクスギビング』

2023年12月30日 / 08:00

『サンクスギビング』(12月29日公開)

 

 感謝祭発祥の地とされる米マサチューセッツ州プリマス。年に1度の祭りで町が沸き立つ中、ショッピングセンターで暴動が起き、多数の死傷者が出る。そして1年後の感謝祭の日に、ダイナーで働く女性が何者かに惨殺される事件が起こる。その後も住民たちが残酷な方法で次々と殺されていく。

 街中が恐怖に凍りつく中、高校生のジェシカ(ネル・ベルラーク)たちは、ジョン・カーバー(プリマス植民地の初代総督)を名乗る謎の人物のInstagram投稿に自分たちがタグ付けされたことに気付く。投稿を確認すると、そこには感謝祭の豪華な食卓にジェシカたちの名札が置かれていた。

 クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスがタッグを組んだ『グラインドハウス』(07)内に収録されたイーライ・ロス監督によるフェイク予告編「感謝祭(Thanksgiving)」を、ロス監督が自らメガホンを取って長編映画化。町の保安官役にパトリック・デンプシー、ほかにアディソン・レイ、マイロ・マンハイムらが共演。

 スプラッターホラーということで、首やはらわたや血しぶきが飛びまくる。刺され、斬られ、七面鳥の代わりに焼かれる女もいる。いやはやグロいことこの上なく、18禁になるのも当然といった感じだが、なぜか嫌悪感は浮かんでこない。むしろ何だかおかしくなって笑ってしまうところがあるのだ。ゾンビ物もそうだか、ホラーとコメディーは紙一重の意をさらに強くした。

 そもそも、発端となるショッピングセンターの暴動の原因が景品のワッフルメーカーの取り合いというのは、もろに喜劇である。加えて、一応犯人捜しのミステリー的な面白さもあるが、犯人の動機も短絡的でおかしいところがある。

 ロス監督は「殺りくのシーンについて、どうすれば自分たちをしのげるかと考える。自分たちだけではなく、他のどの映画も超えなければならない。最高の殺しをすることは、私たちにとって名誉なこと。ホラー映画を作るたびに、偉大なホラー作品に殿堂入りするチャンスが生まれる。そのチャンスを逃す手はない。故に、全ての殺りくシーンにおいて、われわれは傑作を生み出そうとするのだ」と語る。

 また「自分が『ううっ』となる感覚を持たなければならない…。私は映画の残虐シーンに対して、非常に高い耐性を持っている。もし、そのシーンが私自身を動揺させるのであれば、それは観客にも効果的なのだ」と語る。まさに確信犯だ。

(田中雄二)


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