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『ボブという名の猫2 幸せのギフト』
英ロンドンを舞台にした、ジェームズ・ボーウェンのノンフィクションを基に、どん底の生活を送るホームレスの青年が、1匹の猫との出会いを通して再生していく姿を描いた『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(16)の続編。
ホームレスを支援する雑誌『ビッグイシュー』を売って生計を立てるストリートミュージシャンから、一躍ベストセラー作家となったジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)と、彼に幸運をもたらした茶トラ猫のボブ。
出版社のクリスマスパーティに出席した彼らは、その帰り道、路上演奏の違反で警察官に取り押さえられたホームレスの若者を助ける。
ジェームズは自暴自棄になっている若者に、自身が路上で過ごした最後のクリスマスのことを語り出す。それはジェームズにとって、最も困難で苦しい選択を迫られた忘れられない日だった。
前作に引き続いての、ひょうたんから駒的な“福を呼ぶ猫の話”だが、今回は、ジェームズが「自分にはボブを飼う資格があるのか」と悩む姿を通して、猫(ペット)の幸せとは? を問い掛けるところがある。
また、息子を亡くしたインド系の隣人、ジェームズの世話を焼くアジア系の女性、身障者でもある『ビッグイシュー』の販売員、飼い猫を亡くした黒人の動物福祉担当員など、ジェームズを取り巻くマイノリティな人々とのかかわりと人情が描かれ、「いいことをすれば、自分にもいいことが返ってくる」という、一種の“クリスマスの奇跡話”にもなっている。だから、フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』(46)を思わせるところもあった。
これをご都合主義だとか、出来過ぎた話などと批判するのは簡単だが、たまにはこんな話があってもいいと思う方が豊かな気持ちになれる。それが(今はいささか季節外れだが)クリスマス映画の効用だ。
監督は、前作のロジャー・スポティスウッドに代わって、『アメリカン・グラフィティ』(73)や、『アンタッチャブル』(87)などで、俳優としても活躍したチャールズ・マーティン・スミスが担当し、手堅いところを見せる。『アメリカン・グラフィティ』出身でいえば、ロン・ハワードも監督として活躍している。
(田中雄二)