ナチスドイツと戦争がらみの実話とフィクション『オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-』『マヤの秘密』【映画コラム】

2022年2月17日 / 07:15

『マヤの秘密』

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 1950年代、アメリカ郊外の街。ある日、街中で男(ジョエル・キナマン)の指笛を聞いたマヤ(ノオミ・ラパス)に“ある悪夢”がよみがえる。

 戦時中、ナチスドイツの軍人から暴行を受けたマヤは、男がその軍人だと確信し、夫のルイス(クリス・メッシーナ)の手を借りて自宅の地下室に監禁するが、トーマスを名乗るその男は、自分はスイス人で人違いだと否定し続ける。

 ユバル・アドラー監督のこの映画は、果たして、マヤの悪夢は妄想なのか、現実なのかのせめぎ合いで引っ張る、一種の心理サスペンスで、舞台劇を思わせるところもあり、ロマン・ポランスキー監督が戯曲を映画化した『死と処女』(94)をほうふつとさせる。

 ところで、ナチスドイツの罪を描く映画は数多いが、この映画は、被害者をロマの女性にしたところが目を引く。

 ロマといえば、詩人となったロマの女性の生涯を描いた『パプーシャの黒い瞳』(13)や、ロマの血を引く天才ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの半生を描いた『永遠のジャンゴ』(17)という映画があったが、どちらもナチスドイツによるロマに対する迫害の様子が描かれていた。この映画はフィクションで、題材も違うが、その根底には、前の2作と同じものが流れているといってもいいだろう。

(田中雄二)

 

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