【映画コラム】ブロードウェーのヒットミュージカルを映画化した『ディア・エヴァン・ハンセン』

2021年11月25日 / 10:33

 トニー賞で6部門を受賞し、グラミー賞、エミー賞にも輝いたブロードウェーのヒットミュージカルを映画化した『ディア・エヴァン・ハンセン』が11月26日から公開される。

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 監督は、遺伝子の疾患で人とは異なる顔で生まれてきた10歳の少年と家族の姿を描いた『ワンダー 君は太陽』(17)のスティーブン・チョボウスキー。音楽を『ラ・ラ・ランド』(16)『グレイテスト・ショーマン』(17)など、ヒットミュージカル映画に携わってきたベンジ・パセックとジャスティン・ポールが担当。主演は、舞台版でも主人公を演じたベン・プラット。今年の東京国際映画祭のクロージング作品となった。

 高校生のエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、コミュニケーションが苦手で友達もなく、母(ジュリアン・ムーア)にも心を開けずにいる。ある日、医者の勧めで自分宛に書いた「Dear Evan Hansen(=親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を、図らずも同級生のコナー(コルトン・ライアン)に持ち去られてしまう。

 後日、校長から呼び出されたエヴァンは、コナーが自殺したことを知らされる。彼のポケットにはエヴァンの手紙があった。

 悲しみに暮れるコナーの両親(ダニー・ピノ、エイミー・アダムス)は、エヴァンの手紙をコナーが書いたものと勘違いし、息子とエヴァンが親友だったと思い込む。

 彼らをこれ以上苦しめたくないと考えたエヴァンは、思わず話を合わせ、促されるままに、ありもしないコナーとの思い出話を語る。

 その後、エヴァンの語った作り話が人々の心を打ち、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じて世界中に広がり、ひそかに思いを寄せていたコナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)とも親密になるが

 手紙、身代わり、成りすまし、うそも方便。これは古典劇『シラノ・ド・ベルジュラック』の変型ではないかと思ったが、それをミュージカル仕立てにし、現代の若者が抱く精神的な苦痛や孤独感、喪失感を抱く大人たち、他人の悲劇を共有するSNSの功罪を反映させているところが今の映画の証しだと感じた。

 
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