【映画コラム】事実は小説より奇なり。実話を基にした『MINAMATA-ミナマタ-』と『クーリエ:最高機密の運び屋』

2021年9月22日 / 07:15

キューバ危機の舞台裏『クーリエ:最高機密の運び屋』

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 1962年10月、アメリカとソ連の対立が激化し、キューバ危機が勃発する。世界を震撼させたこの危機に際し、戦争回避に決定的な役割を果たしたのは、実在の英国人セールスマン、グレビル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)だった。

 スパイの経験など一切ないにも関わらず、CIA(アメリカ中央情報局)とMI6(英国秘密情報部)の依頼を受けてモスクワに飛んだウィンは、平和を願って国に背いたGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の高官ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)と接触を重ね、そこで得た機密情報を西側に運び続けるが…。

 キューバ危機の舞台裏で繰り広げられた知られざる実話を基に、戦争回避のために命を懸けた男たちの葛藤と決断、友情をスリリングに描いたスパイ・サスペンス。監督はドミニク・クック。設定や背景は異なるが、同じ時代を背景にしたスティーブン・スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)のことを思い出した。

 サーカスのジンタを思わせるような、ユーモアともの悲しさを併せ持ったアベル・コジェニオウスキの音楽が象徴するかのように、前半は素人スパイとなったウィンの困惑と高揚、ペンコフスキーとの友情が築かれていく様子が、時折ユーモアも交えながら描かれるが、後半はがらりと雰囲気が変わり、捕らわれた2人の悲劇が重厚に描かれる。

 実話の映画化だから、史実は動かせないのだろうが、あまりにも落差の大きい、前半から後半への変転を見るのは、正直なところつらかった。

 カンバーバッチは「ウィンとペンコフスキーの関係は、ある意味、プラトニックラブ。そこに心引かれる。この作品が単なるスパイ映画を超越しているゆえんはそこにある」と語っている。確かに、そこがこの映画のユニークなところだ。そのカンバーバッチにも増して、ニニッゼが好演を見せる。(田中雄二)

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