【映画コラム】ユニークな視点で描かれたドキュメンタリー映画『ブックセラーズ』と『SNS-少女たち10日間-』

2021年4月22日 / 06:26

 オーディションに合格した幼い顔立ちをした18歳以上の3人の女優が、撮影スタジオに作られた子ども部屋に集められた。そして、12歳の少女になりすました彼女たちが、SNSで友達募集をすると、2458人もの成人男性がコンタクトを取り、すさまじいまでの性的欲望をあらわにした…。

(C)2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

 『SNS-少女たち10日間-』は、現在、SNS上で、子どもたちが直面する危険を、成人女性をおとりに使って検証し、そのありのままを映したチェコ発の実験的なドキュメンタリー映画だ。

 では、SNS上で、実際にどんなことが起きたのか。さまざまな年齢の男たちは、女優たちが「私は12歳だけど、いいの?」と問い掛けても全く意に介さない。そして、大多数の者はビデオセックスを要求し、勝手に自慰をする者、自身の性器の写真やポルノのリンクを送信してくる者、親にバラすと脅す者など、おぞましい姿をカメラの前にさらしたのだ。もちろん彼らの顔にはぼかしが入っているが、それ故に、男たちの姿はどこか滑稽にも映る。

 この映画の、リアリティーショーを思わせるような手法はとてもユニークだ。ビート・クルサーク監督は「この形式にしたことでリアルタイムの出来事を見せることができたし、タブーの扉を一つ開けて、社会を巻き込んで議論するきっかけにもなった」と胸を張る。

 確かに、この映画は映像の持つ告発力の強さを示すが、それと同時に、いくら男たちが許されざる行為をしているからと言って、おとりを使って彼らをだまし、それを映像で見せることが果たして正義なのかという疑問も残らなくはない。そうした意味では、この映画は映像の持つもろ刃の剣のような特徴を表しているとも言えるのだ。(田中雄二)

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