X


【映画コラム】ワールドカップの余勢を駆って『アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!』

 2018 サッカーワールドカップもいよいよ大詰めを迎えた。そんな中、原始人のサッカー対決を描いたアニメーション映画『アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!』が公開された。

(C)2017 Studiocanal S.A.S. and the British Film Institute. All Rights Reserved.

 本作は『ウォレスとグルミット』『ひつじのショーン』シリーズなどを作ったイギリスのニック・パーク監督とアードマン・アニメーションズが作り上げたクレイアニメ作品である。

 クレイアニメとは、登場人物と背景をクレイ(=粘土)でできたパペット(=人形)で作り出し、1コマずつ撮影を重ね、長い時間を懸けて1本の作品に仕上げていくもので、CGアニメとはひと味違う温かみが感じられる。本作も8年の歳月を懸けて作られたという。

 そんな本作の舞台は、マンモスが生きていた先史時代。原始部族の少年ダグと仲間たちが住む谷が、青銅器族の総督ヌースに侵略される。ブロンズ・エイジ・シティで“サッカー”というスポーツが行われることを知ったダグは、故郷を取り戻すため、最強チームに戦いを挑む。

 最初のボールは隕石? ゴールは岩を積み上げたもの? など、まことしやかにサッカーの起源が語られるのが楽しいが、「ただボールを蹴って、相手のゴールに入れればいい」というシンプルなせりふや、個人技よりもチームワーク、戦争ではなくサッカーで決着を着けるという設定などから、スポーツの本質を突くような鋭さもある。

 また、ダグの声を『博士と彼女のセオリー』(14)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメイン、敵役のヌースを『アベンジャーズ』シリーズのロキ役などで知られるトム・ヒドルストンが演じているのも見どころだ。ダグのペットでイノシシのホグノブがいい味を出しているが、これはパーク監督自身が吹き替えたとのこと。  

 粘土製のキャラクターたちが、古代ローマのコロシアムを思わせるスタジアムで躍動するクライマックスは圧巻。ワールドカップの余勢を駆って、夏休みに親子そろって見に行くには最適の映画だ。(田中雄二)