【映画コラム】クルーガーが入魂の演技を見せる『女は二度決断する』と、『卒業』+ウディ・アレンのような『さよなら、僕のマンハッタン』

2018年4月13日 / 20:28

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 『さよなら、僕のマンハッタン』の舞台は、タイトル通りニューヨーク。大学卒業後の人生に迷うトーマス(カラム・ターナー)が、不思議な隣人(ジェフ・ブリッジス)や、父の愛人(ケイト・ベッキンセール)との出会いによって、本当の自分を見付けていく様子を描く。マイク・ニコルズ監督の『卒業』(67)とウディ・アレンの諸作を混ぜ合わせたような、皮肉とほろ苦さを含んだ青春物語。あっと驚く展開を見せながら、最後はホロリとさせる。

 原題の「The Only Living Boy in New York=ニューヨークの少年」は、サイモン&ガーファンクルのアルバム『明日に架ける橋』(70)に収録された曲から取られている。これはポール・サイモンが、当時メキシコで『キャッチ22』(70)(これもニコルズ監督作)を撮影中のアート・ガーファンクルに向けて書いた曲で、ニューヨークに一人残ったサイモンの心境が歌詞に反映されている。だから、曲の出だしで呼び掛ける「トム」とはガーファンクルのことなのである。彼らはサイモン&ガーファンクル以前は、トムとジェリーを名乗っていたのだ。

 この映画は、主人公をトムと名付けることで曲との関連性を明示し、「なるほど」というシーンでこの曲を流す。というわけで、映画のシニカルな内容もさることながら、同じくサイモン&ガーファンクルの曲を使った点でも『卒業』をほうふつとさせる。それにしてもなぜ邦題を「ニューヨークの少年」にしなかったのだろうか。(田中雄二)

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