【芸能コラム】「愛と寛容さ」でつながる2017年日米の代表作『シェイプ・オブ・ウォーター』と「おんな城主 直虎」

2018年4月6日 / 16:06

 戦国時代、女性でありながら領主となった井伊直虎(柴咲コウ)は、小さな領地・井伊谷を守るため、数々の困難に立ち向かっていく。その過程で出会うのが、盗賊団を率いる龍雲丸(柳楽優弥)だ。武家社会の中で生きてきた直虎にとって、盗賊の龍雲丸はそれまで出会ったことのない異質な存在。家臣たちが警戒する中、直虎はただ一人、龍雲丸一党を受け入れ、自分たちにはない技術を持つ彼らを味方にすることで、井伊谷を守る力とする。それと同時に、直虎と龍雲丸は互いに引かれ合っていく…。

 直虎と龍雲丸の関係は、そのまま『シェイプ・オブ・ウォーター』におけるイライザと半魚人に重なる。頑丈な鋼鉄製の箱に入れられた半魚人同様、龍雲丸が捕まって檻に入れられる場面も、その印象を補完する。この他、直虎の後を継いだ直政(菅田将暉)が、かつて井伊谷を侵略した武田軍の兵士たちを配下に加えることで、一度はついえた井伊家を再び繁栄に導く最終回など、随所に「愛と寛容さ」がにじむ物語となっている。

 アカデミー賞作品賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』と、日本を代表する映像作品である大河ドラマ「おんな城主 直虎」。両国の2017年を代表する作品が、共に「愛と寛容さ」というキーワードでつながるのは、単なる偶然ではないだろう。

 さらに補足すれば、『シェイプ・オブ・ウォーター』は、世界三大映画祭の一つ、ベネチア国際映画祭でも最高賞に当たる金獅子賞を受賞している。それはつまり、国家や民族といった世界的規模からSNSのような個人レベルまで、人々の分断が進む今の世の中に対する、国境を越えた物語の作り手たち共通の願いだと言えるのではないか。

 既に放送が終了した「おんな城主 直虎」だが、DVD/Blu-rayは最終回までリリースされており、総集編のDVD/Blu-rayも4月27日に発売予定。公開中の『シェイプ・オブ・ウォーター』と併せて、今一度その物語を味わってみてはいかがだろうか。(井上健一)

「おんな城主 直虎」

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