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一方、ラブコメディーとしての魅力を引き出しているのが、唯(=唯之助)を演じる黒島結菜の存在だ。
1997年3月生まれ、20歳の黒島は、2012年の芸能界デビュー以来、数々の作品でキャリアを積み、柳楽優弥と共演した「アオイホノオ」(14)で注目を集めた。2016年には「時をかける少女」で、連続ドラマ初主演を飾っている。
本作は、黒島にとって「時をかける少女」に続くタイムトラベルものとなるが、屈託のない伸び伸びとした演技は青春ものにぴったりだ。
そもそも、女子高生が足軽になるという設定自体、リアリティーのない話だが、女性らしさと少年のような雰囲気が同居する黒島のたたずまいが、それを違和感なく成立させている。さらに、馬上の若君を追って全力疾走するすがすがしさ、若君の寝所で戸惑う初々しさ、大声で「おお牧場はみどり」を歌う無邪気さなど、持ち味を存分に発揮し、軽快に物語を引っ張っていく。この軽やかさは、黒島にしか出せない味わいだ。
時代劇の重厚感とラブコメディーの軽やかさが混じり合ったテイストは物語にも波及し、ジャンルの枠を超えた縦横無尽な展開で楽しませてくれる。折り返しを迎えた第6回(10月28日放送)では、若君様が平成の世にタイムスリップし、唯が1人で戦国時代に取り残されるという予想外の展開に。果たして今後、唯と若君の運命はどうなっていくのか。物語の後半からも目が離せない。
(井上健一)