【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#セブチを見ていると分かる、韓国の年齢の不思議

2026年7月8日 / 15:25

▽年齢を隠す恋愛番組

 「そんな年齢の秩序、今どき薄れているのでは?」と思うかもしれない。それを逆説的に証明してくれる番組がある。ネットフリックスでも人気の恋愛リアリティー番組「脱出おひとり島」だ。

 この番組では、出演者は互いの年齢や職業を明かさない。年齢が分かると、どちらが年上かが決まり、自然と敬語や呼び方も決まってしまうからだ。まずは年齢を気にせず相手と向き合えるようにする。そう考えると、このルールの意味もわかりやすい。

 裏を返せば、韓国では「年齢を明かすこと」が「関係を決めてしまうこと」だという前提が、みんなに共有されているということだ。もし年齢の秩序がとうに消えた社会なら、隠す意味などない。このルールそのものが、年齢が人間関係に影響するという考えが今も残っていることがわかる。

▽「上下関係が厳しい国」?

 ここまで読むと、「やっぱり韓国は上下関係の厳しい、窮屈な国だ」とまとめたくなるかもしれない。だが、それは半分しか当たっていない。

 セブチの会話の7割がタメ口だった、という最初の数字を思い出してほしい。ただ、それは年齢を意識していないということではない。年下のメンバーは年上を「ヒョン」と呼び続けている。口調はくだけても、年上の呼称は使っている。

 だからこそ、タメ口で冗談を言い合い、ときには強くツッコんでも、人間関係が崩れない。親しさと年齢による呼び方は、矛盾せずに共存するのである。

 もちろん、この年齢秩序を息苦しいと感じる人もいる。韓国でも、年齢や上下関係をめぐる感覚は少しずつ変わってきている。

 それでも、セブチの会話を見ていると、韓国の年齢の秩序は、上が下を押さえつける一方通行の窮屈さだけではないように見える。むしろ、全員が各自の位置を分かっているという安心の上に、わちゃわちゃした親密さが成り立っている。

 初対面で年齢を聞くのも、タメ口で話しながら「ヒョン」と呼び続けるのも、考え方は共通している。相手との関係を曖昧にしておかない。まず年上か年下かという関係をはっきりさせてから、距離を縮めていく。年齢は「人を縛るもの」というだけでなく、安心して親しく付き合っていくためのよりどころなのかもしれない。

 次にセブチのわちゃわちゃを見るとき、あの賑やかなタメ口の中にときどき挟まる「ヒョン」に、少しだけ耳を澄ませてみてほしい。


筆者プロフィール
たんふる先生(韓活韓国語ラボ)。韓国語・韓国文化研究者。NHKラジオ語学講座の講師を務めた経験を持つ。K-POP、韓国ドラマ、SNSの言葉をデータとして読み解き、教科書には載りにくい韓国語と韓国文化の面白さを発信している。

 

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