【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#セブチを見ていると分かる、韓国の年齢の不思議

2026年7月8日 / 15:25

▽タメ口は崩せる、でも「ヒョン」は残る

 日本でも、兄弟や親しい先輩後輩のあいだでは、呼称は残したまま口調だけくだけることがある。「お兄ちゃん」と呼びながらタメ口で話すこともあれば、「先輩」と呼びながら冗談を言い合うこともある。

 もう少し近い例を挙げるなら、日本のお笑い業界かもしれない。芸人が先輩を「兄さん」「姉さん」と呼ぶ、あの感覚である。楽屋ではかなりくだけた言葉で笑い合い、ときには強くツッコむ。それでも「兄さん」「姉さん」という呼び方は、年上・年下の関係を示す呼び方として残る。口調は崩れても、呼称には先輩後輩の関係が残っている。韓国語の「ヒョン」も、これに近い。ただし韓国語では、それが一部の芸能界や職能集団だけでなく、より広い日常の人間関係の中でも広く使われている。

 セブチの会話を見ていると、焦点は「敬語か、タメ口か」ではないことがわかる。親しくなれば口調はくだける。一方で、年下は年上を呼び捨てにせずに「ヒョン」と呼び続け、上下関係を保っている。年上に対する口調と呼び方は、必ずしも連動していないのである。

▽韓国語には「さん」がない

 日本語には「さん」という呼び方がある。年上でも、年下でも、初対面でも、「田中さん」と呼んでおけば大きな失礼にはならない。相手との上下関係を決めなくても、会話を始められる便利な呼び方である。

 一方、韓国語には日本語の「さん」に当たる言葉がない。「シ(氏)」という呼び方はあるが、同年代や目下の相手に、フルネームや名前を添えて使うのが一般的だ。年上には「ヒョン」など、その相手に応じた呼び方を選ぶことになる。

 つまり韓国語では、「さん」で曖昧にやり過ごすことができない。相手が誰で、自分とどういう関係なのかを先に決めて、それに応じた呼び方を選ばないと、最初の一言が出せないのだ。

 ここで重要なのは、呼び方を決めることが、口を開くための前提条件になっているということだ。相手が誰で、自分より年上なのか年下なのか。親しい相手なのか、まだ距離のある相手なのか。そこを決めないままでは、どの呼び方で話し始めればよいのかが定まらない。

 ここまで来ると、最初の疑問が解ける。韓国の人が初対面で年齢を聞くのは、失礼どころか、その逆だ。年齢を聞くのは、相手との関係をきちんと結ぶための、いわば最初のあいさつのようなもの。「あなたと私は、どういう関係でいきましょうか」を確認する、丁寧な手続きなのである。


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